山梨県の芸術の森公園内に対面する2つのミュージアムの1つ、山梨県立文学館では、日本文学に名を残した著名な作家や、県ゆかりの文学者の資料を紹介しています。
山梨県立文学館
文学館では、誰もが名前を知っている著名な作家や、山梨ゆかりの作家たちが実際に使用した執筆道具や日常品を紹介する展覧会を開催中です。
まず紹介するのは、明治期に活躍した樋口一葉。24年の短い生涯の中で、「たけくらべ」をはじめとする数々の名作を残した一葉が、実際に使用していた首飾りや櫛がイラストとともに並んでいます。
樋口一葉 の愛用品
山梨の笛吹市生まれの俳人・飯田蛇笏の愛用品は、句会の際に使用した5段重ねの硯や文鎮。蛇笏が先輩の俳人・高浜虚子との旅で買い求めた菅笠や、虚子を甲府で迎えた際の写真も紹介しています。
飯田蛇笏 の愛用品
同じく山梨県出身の作家・深沢七郎のブースにはギターが展示。デビュー作「楢山節考」が有名ですが、日劇日劇ミュージックホールでギターの演奏をしていたギタリストでもあります。
山梨県民会館ホールで開かれたギター・リサイタルのポスターや若い頃のギターを手にした写真からも、異色の経歴を感じることができます。
深沢七郎 の愛用品
第二次大戦時に妻の実家がある甲府に疎開した太宰治。ここでは、執筆した作品の記録や構想していた作品のメモや題材を記すために用いられたノートを展示。空襲の際にはこのノートを持ち出して避難しました。
また、太宰の本名「津島修治」と疎開先である妻の実家の住所が書かれた地下足袋もあり、戦時下の生活を垣間見ることができます。
太宰治の愛用品
会場には、作家が執筆に使用した原稿用紙も展示されています。朝日新聞に勤め、小説を連載していた夏目漱石。その時の新聞の名残から、1段が19文字になっている原稿用紙が特徴です。
山梨市生まれの林真理子は、赤線で下部に「林 真理子の原稿」と記された原稿用紙を現在も使用しているとのこと。それぞれの作家の筆跡も楽しむことができます。
林真理子 の原稿用紙
常設展示室では、山梨ゆかりの作家を紹介。芥川龍之介のコーナーでは、芥川が北杜市にて講演を行った際に、そのお礼として描いた河童の「水虎晩帰之図」も展示しています。
常設展示室
作家が使用していた日用品や執筆道具から、時代背景や暮らしぶりを感じられる本展。それぞれの作家の趣味やエピソードを知ることで、作品をより深く楽しみことにも繋がるかもしれません。
[ 取材・撮影・文:古川 幹夫、坂入 美彩子 / 2021年4月20日 ]