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    レポート
    扇の国、日本
    サントリー美術館 | 東京都
    ニッポン美術の代表選手
    団扇は古代の中国やエジプトでも使われましたが、扇が日本生まれという事は、あまり知られていないかもしれません。誰でも携帯できるサイズの扇は、身近な美術品でもありました。扇をめぐる美の世界を紹介する展覧会が、サントリー美術館で開催中です。
    (左奥から)重要文化財《龍胆瑞花鳥蝶文彩絵扇箱》 / 重要文化財《彩絵檜扇》 ともに島根・佐太神社(島根県立古代出雲歴史博物館寄託)[展示期間:11/28~12/24]
    (左手前から)狩野探幽 画《山水図扇面》 / 長沢芦雪 画《雀図扇面》 ともに東京国立博物館[展示期間:11/28~12/17]
    (左手前から)《陣扇(毛利秀就関係資料のうち)》毛利博物館[全期間展示、ただし場面替あり] / 《檜扇残欠(伊勢国朝熊山経ケ峯経塚出土品のうち)》金剛證寺・三重県教育委員会[展示期間:11/28~12/24]
    (左奥 二幅)「元久」印《扇面画》[全期間展示、ただし場面替あり] / (右手前)狩野松栄 画《十牛図》[展示期間:11/28~12/17] ともに個人蔵
    (左から)《北野天神縁起絵扇面貼付屛風(右隻)》大阪・道明寺天満宮 / 《源平合戦扇面貼交屛風(右隻)》個人蔵[ともに全期間展示、ただし場面替あり]
    (左から)与謝蕪村 画《「美人図」自画賛》 / 中村芳中 画《秋草月図》 ともに個人蔵[展示期間:11/28~12/24]
    (右手前)歌川国貞 画《夕立図》太田記念美術館 / (左奥)徳山玉瀾 画《山水図》 個人蔵[ともに展示期間:11/28~12/24]
    (手前 五客)尾形乾山 作《銹絵染付絵替扇形向付》 / (奥)尾形乾山 作《銹絵山茶花図扇面手鉢》 ともに MIHO MUSEUM[全期間展示]
    (左奥から)《梅樹扇模様帷子》女子美術大学美術館[展示期間:11/28~12/10] / 《御簾扇桜模様小袖》女子美術大学美術館[展示期間:11/28~12/17] / 《紅水浅葱段扇夕顔模様唐織》髙島屋史料館[展示期間:11/28~12/10]
    モネが《ラ・ジャポネーズ》で描いたように、日本美術の象徴的な存在といえる扇。ただ、美術館で扇そのものをテーマにした展覧会が開かれるのは珍しく、サントリー美術館では開館翌年の1962年に「扇面と団扇」展が開催されて以来、56年ぶりとなります。

    会場冒頭には、美しい3点の扇。明治11年(1878)のパリ万博に出品された、百本一組の扇面画コレクションの一部です。日本美術の水準を扇で示そうとした明治政府。選ばれた扇面画は、時代・絵師ともに、非常に幅が広い事も注目されます。

    扇を大きく分類すると、薄い板を綴じ重ねた「檜扇」と、竹骨に紙や絹を張った「紙扇」になります。扇は儀礼で使われたほか、仏像の納入品にもなりました。願主が臨終した際に熱地獄を免れるため、と考えられています。

    扇と相性が良いのが、水流です。美しい扇を川に流して興じる「扇流し」のほか、扇の背後に流水や波を描く「扇流し図」も数多く見られます。

    鎌倉時代の仏教説話集《長谷寺験記》には「出家した夫の行方を探していた妻が、川に流れてきた扇から、その場所を知る」という、ロマンチックなエピソード。ここでの扇は、運命の小道具です。

    扇は10世紀末から大陸に広まり、日明貿易では主要な輸出品になりました。国内でも贈答品として用いられたため、大量に生産される事に。室町時代の14世紀半ばには、店頭でも売られるようになりました。

    会場では、扇を注文した際のレシートにあたる資料も展示されています。展覧会の趣旨は「扇面画」ではなく「扇」。文化史の中での扇の位置づけを考察します。



    もちろん、扇には美術品としての意味合いもあります。長大な物語を扇面で表現する際は、名場面をダイジェスト的に描く事に。画面が小さいため、モチーフは厳選され、整理されたイメージが人々の間に広まっていきました。

    江戸時代になると扇の需要はさらに広まり、「扇売り(地紙売り)」と呼ばれる行商人も登場します。幕府御用達の狩野派から新興の流派まで、あらゆる絵師が扇絵を手掛け、新しいモチーフや構図が次々に登場。扇の世界は、飛躍的に拡大していきました。

    展覧会名「扇の国、日本」は、二ホンではなくニッポンと読ませます。あえてニッポンと読ませる理由は、会場最後で分かります。答えはサントリー美術館でご確認ください。

    本展の担当は、サントリー美術館主任学芸員の上野友愛さん。オヤジギャグっぽさが溢れるキャッチコピー「せんすがいいね」は、うら若き上野さんによる命名との事。ちょっと意外でした。

    東京展の後に、山口県立美術館に巡回します(2019年3月20日~5月6日)。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年11月27日 ]

    ※会期中に展示替えがあります

    Discover Japan_CULTURE TOKYO美術館2018-2019Discover Japan_CULTURE TOKYO美術館2018-2019

    ディスカバージャパン編集部 (編集)

    エイ出版社
    ¥ 1,296

    料金一般当日:1,300円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon

     
    会場
    会期
    2018年11月28日(水)~2019年1月20日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00
    休館日
    火曜日(ただし、1月15日は18時まで開館)、12月30日~1月1日
    住所
    東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3F
    電話 03-3479-8600
    公式サイト http://suntory.jp/SMA/
    料金
    一般 1,300(1,100)円 / 大学・高校生 1,000(800)円 / 中学生以下 無料

    ※( )内は前売券料金。販売は各プレイガイドにて、9月19日(水)~11月27日(火)(サントリー美術館での販売は9月19日(水)~11月11日(日)の開館日)
    ※20名以上の団体は100円割引
    展覧会詳細 扇の国、日本 詳細情報
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