人々の暮らしの中に仏教が息づいているタイ。展覧会では長い歴史を通じて育まれた、タイならではの仏教美術を紹介していきます。
まずは第1章「タイ前夜 古代の仏教世界」から。13世紀より前はタイ美術の黎明期にあたり、多様な信仰がタイ文化の土壌となりました。
《ナーガ上の仏陀坐像》は、クメール美術の影響を受けた仏像。竜王ムチリンダが傘になり、瞑想する仏陀を雨風から守っています。
第1章「タイ前夜 古代の仏教世界」第2章は「スコータイ 幸福の生まれ出づる国」。スコータイは1238年にタイ族がひらいた王朝で、歴代の王は上座仏教を篤く信仰。多くの寺院が建てられ、現在のタイ文化の基礎が築かれました。
展覧会のイメージビジュアルでもある《仏陀遊行像》は、この章で展示。「ウォーキングブッダ」の愛称で知られるように、軽やかに歩みを進める仏陀像です。日本では見れませんが、タイではこの時代に盛んに作られました。
第2章「スコータイ 幸福の生まれ出づる国」展示物は少ないながら、とても豪華なのが第3章。「アユタヤー 輝ける交易の都」です。14世紀半ばから400年も繁栄したアユタヤー。中東や西洋とも貿易を行い、華麗な金属工芸が発達しました。
ひときわ目を引くのが《金象》。貴人が乗る輿を背に載せ、貴石の飾りも華やかです。高さは15センチほどですが、実は耳が動くように作られています。
第3章「アユタヤー 輝ける交易の都」第4章は「シャム 日本人の見た南方の夢」。日本とタイの交流は古く、シャムとして知られていました。15世紀から琉球を介した交流が始まり、鎖国時代にも民間交易による通交は続いています。
アユタヤー郊外の日本人町の首領として活躍したのが山田長政。タイの国王にも重用されましたが、最期は暗殺されたと伝わります。
第4章「シャム 日本人の見た南方の夢」最後の第5章は「ラタナコーシン インドラ神の宝蔵」。現在のバンコク王朝であるラタナコーシンは「インドラ神の宝蔵」を意味します。
ここでの見せ場は《ラーマ2世王作の大扉》。国王のラーマ2世が自ら彫刻したと伝えられ、なんと高さは5.6メートル。さまざまな動物たちが表現されています。
ユニークなのは、タイで作られた日本刀。豪華な意匠で上級貴族に重用されました。
第5章「ラタナコーシン インドラ神の宝蔵」東京国立博物館では30年ぶりとなるタイの展覧会。《ラーマ2世王作の大扉》は撮影も可能です(フラッシュは不可)。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年7月3日 ]■タイ~仏の国の輝き~ に関するツイート