大英博物館の分館として設立された大英自然史博物館。大英博物館自然史部門の責任者で、解剖学者のリチャード・オーウェンが、現在のロマネスク調の建物で開館しました。
展覧会では大英自然史博物館の歩みを俯瞰。膨大なコレクションを寄贈したハンス・スローン、前述のリチャード・オーウェン、植物学者のカール・リンネ、そして進化論のチャールズ・ダーウィンら、コレクションに関連する人々にもスポットを当てながら、多彩な資料や標本を紹介していきます。
会場貴重な展示品ばかりですが、ここでは少しだけご紹介します。
巨大な鳥の骨格標本は、ニュージーランドの絶滅鳥、モア。発見された一つの骨を、他の生物の骨と比較して「巨大で飛べない鳥」と結論付けたのも、前述したリチャード・オーウェンです。
「恐竜」の名付け親としても知られ、科学の歴史にその名を残すオーウェン。ただ、ダーウィンの進化論を声高に批判したのもオーウェンでした。
モア本展最大の目玉が、始祖鳥の化石。恐竜と鳥類が進化的につながっている事を示す、重要な証拠です。
約1億4700万年前に生息していた始祖鳥は、恐竜のような歯やカギヅメを持つ一方で、翼と羽毛は現在の鳥類のよう。現生種と祖先の間に存在した中間的な生物の発見は始祖鳥が初めてで、ダーウィンの進化論を強力に後押しする事になります。
学術的に報告された始祖鳥は、これまでにわずか12点。このロンドン標本からは脳と三半規管が高精度で復元されており、始祖鳥が飛行に必要な視力や平衡感覚を持っていたことが分かりました。
始祖鳥長い歴史を有する大英自然史博物館には、暗黒史ともいえるエピソードがあります。科学史上最も悪名高い捏造事件「ピルトダウン人の発見」です。
1912年に発見された化石人骨。類人猿と現代人をつなぐ大発見と思われましたが、実はオランウータンと人の骨を着色・加工したものでした。発見を後押ししたのも、1953年に不正を暴いたのも、大英自然史博物館です。
学術的には意味が無くなったピルトダウン人ですが、博物館は標本を100年以上保存し、最近もDNA鑑定を含めた新たな分析が行われました。標本に対する博物館の姿勢を象徴するエピソードです。
ピルトダウン人ここでは紹介しませんでしたが、会場には日本に関連する資料も。日本に落下した隕石や、「昭和天皇が培養した粘菌」など、かなりレアな資料も里帰りしています。ごゆっくりお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年3月17日 ]■大英自然史博物館展 に関するツイート