会場はクロマニョン人の等身大人形から。見事な造形は、古代人類の復元を専門に手掛けるフランスの芸術家(Elisabeth Daynès)による制作です。
フランス南西部のヴェゼール渓谷にある、ラスコー洞窟。全長約200m、3つの空間に分かれており、その複雑な内部も会場の模型で確認できます。
洞窟からは壁画だけでなく、さまざまな遺物も見つかっています。壁画を描いた顔料、石器、角製の槍などのほか、スプーン状の容器も。これはランプで、くぼみに動物の脂を置いて火をともし、暗い洞窟で描画を進めたと考えられています。
第1~3章実際のラスコー洞窟の壁画が見たくなるところですが、現地は厳重な保全体制が敷かれており、研究者でさえもラスコー洞窟に入る事ができません。展覧会では、洞窟の中でも傑作が並び特徴的な技法で描かれた「身廊(しんろう)」の壁画群と、「井戸の場面」の絵を実物大で再現しています。
洞窟の入口から30mほど進んだ先にある「身廊」。教会建築で中央の大きな空間を意味する名が付けられているように、ここは天井が高く、有名な《黒い牝ウシ》、《泳ぐシカ》、《背中合わせのバイソン》などが描かれています。
「身廊」の壁画は彩色だけでなく線刻も使われており、ライトアップで線刻の表現が浮かび上がる演出も。2万年前の芸術世界に浸ってください。
第4章会場後半では、ラスコー洞窟に壁画を残したクロマニョン人についての考察です。
ヨーロッパでハンドアックスなどの大型石器を使いだしたのは、約60万年~約30万年前のハイデルベルク人(前期旧石器時代)。約30万年~約4万年前のネアンデルタール人は1つの原石から多くの石器を得る技術(ルヴァロア技法)を開発した事で、道具の文化は大きく広がります(中期旧石器時代)。
クロマニョン人は約4万年前に登場。石器が急速に高度化したほか、骨や象牙など他の素材を使った道具も発明しました。毛皮を加工し、装身具も発達する中で、壁画だけでなく動物ゃ人物を表現した像なども制作し、芸術的な要素も洗練されていったのです。
第5~7章クロマニョン人の時代にヨーロッパには高度な芸術文化がありましたが、日本ではあまり見つかっていません。ただ、これは日本の土壌が酸性のため骨や角などが残りにくいためで、決して遅れていたわけではありません。静岡にある世界最古のおとし穴(!)をはじめ、日本での創造的活動も第2会場で紹介されています。
本展は全国三会場をまわる巡回展。東京展の後は宮城、福岡とまわります。
会場と会期はこちらをご覧ください。[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年10月31日 ]公式サイト http://lascaux2016.jp/
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