1885年に創立されたデトロイト美術館。自動車業界の有力者らの資金援助を通じて多くの名作を収集してきました。
古代エジプトから現代美術まで幅広いコレクションを誇りますが、本展では中核といえる印象派、ポスト印象派、20世紀のフランス、ドイツの名画を展示しています。
4章構成の会場は、第1章「印象派」から。1874年の第1回展に出展されたモネ《印象・日の出》から、批評家がグループを揶揄して名付けた印象派ですが、絵画史に大きな足跡を残しました。
紹介されているのはピサロ、ドガ、モネなど。中でもルノワールの3点は目を引きます。
第1章「印象派」続いてセザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、スーラなどの第2章「ポスト印象派」。印象派とは違ってグループでの行動はしていませんが、それぞれが独自の解釈で、革新的だった印象派のさらなる先に取り組みました。
展覧会のメインビジュアルになっているゴッホの自画像は、ここで登場します。米国の公共美術館に収められた初めてのゴッホ作品です。ゴッホは自画像が多く、特に1887年には多数の自画像を描いていますが、これもそのひとつ。パリ在住、34歳の頃の自画像です。
第2章「ポスト印象派」2階に進んで、第3章は「20世紀のドイツ絵画」。キルヒナーやカンディンスキーなど「ドイツ表現主義」とされる作品ですが、彼らも特定の芸術観に基づいた活動を行っていたわけではありません。
あえて共通点を探せば、既成のアカデミズムに対する反発や、内面の表現を追及する志向など。当然ながら写実的なスタイルからは離れますが、後に政権を握ったナチスは、これらを「退廃芸術」として糾弾します。
第3章「20世紀のドイツ絵画」最後の第4章が「20世紀のフランス絵画」。国際化が進んだパリには、キュビスムを牽引したピカソ(スペイン出身)、20世紀初頭の最も優れた肖像画家といえるモディリアーニ(イタリア出身)など、世界各国から才気溢れる芸術家たちが集いました。
ここで紹介されているマティスの《窓》も、米国の公共美術館に収められた初めてのマティス作品です。ゴッホ《自画像》と同じ1922年にデトロイト美術館の所蔵作品となりました。
第4章「20世紀のフランス絵画」本展はなんと、全作品撮影が可能。デトロイト美術館では多くのギャラリーでは来館者による写真撮影が許可されている事にちなんだもので、東京展では月曜日と火曜日のみ撮影が可能です。欧米の美術館は撮影可が多いですが、日本の大型美術展としてはかなり珍しい試み。ご都合があえば、月・火曜日にどうぞ。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年10月6日 ]■デトロイト美術館展 に関するツイート