展覧会は海の生物資源を捕獲して食べる「海のハンター」たちを4章で紹介するもの。対象は私たちも含まれる脊椎動物に絞っていますが、展示物はかなりの量。生物の多様性を実感してもらおうという企画です。
最初の1章のみ、絶滅した生物の紹介。進化の過程を辿ると、もともと脊椎動物には顎がありませんでした。顎を持った事で、大きな獲物を食べられるようになった脊椎動物は、巨大化が進む事になります。
約1千万年前に繁栄していたのが、全長10m超の巨大サメ「カルカロドン・メガロドン」。展覧会では世界最大級となる全長12.5mの復元模型が製作されました。頭上に吊るされて展示されているのは、ちょうどバスぐらいの大きさ、現在のホホジロザメをはるかに上回る巨体です。
第1章 太古の海のプレデター続く第2章が、展覧会のメイン。「深海」「極域」「外洋」「浅海」の4つの生息域に分けて、さまざまな海のハンターが紹介されます。
展覧会最大のポイントであるホホジロザメ成魚の全身液浸標本は、ここで登場。沖縄で2014年に見つかった全長3.2mのオスで、ホホジロザメ成魚の全身液浸標本を研究のために作ったのは、これが世界で初めてです。ホルマリン漬けですが、まるで生きているかのよう。どっしりとしたフォルム、迫力ある面構え、いかにも噛む力が強そうな口と、間近でみる最強のハンターは、相当の威圧感。映画「JAWS」の恐怖を思い出します。
サメは「サメラボ」としてまとめて展示。生物学上サメは8目(もく)に分類されますが、今回は8目25種のサメ類を全て展示しています。いかにもサメ、という身体つきのものだけでなく、ウナギのようだったり、エイのようだったりと、サメだけでもかなり差がある事も分かります。
第2章 大海原のハンター展示内容がユニークなのは、続く3章。ハンターたち狩りのテクニックと生態が紹介されています。
獲物に噛み付いた体を回転させ肉をえぐり取る「ダルマザメ」、獲物を捕える顎の奥に食べたものを食道に進める顎を持つ「ウツボ」、一列に並ぶ放出孔から粘液を放出して獲物の鰓に詰まらせる「ヌタウナギ」と、奇想天外な技の数々。まさに食うか食われるか、海の中では今日も死闘が繰り広げられています。
第3章 海のハンターたちのテクニック多くの海のハンターを紹介してきましたが、実はもう1種、強力な海のハンターが。それは私たち人間です。
食物連鎖の頂点にたつ私たち。特に日本人は、さまざまな魚を食べまくってきましたが、近年では水産資源の枯渇は大きな社会問題になっています。
ルール無用の暴走ハンターだった人間ですが、最終章では近畿大学でついに実現したクロマグロの完全養殖や、資源量が著しく減ったニホンウナギなどについて紹介。海と人との共生を考えます。
第4章 ヒトも海のハンター科学や自然分野の博物館で「夏休みの企画展」といえば、恐竜や宇宙関係などが定番。正直「やや地味かも…」と思っていましたが、良い意味で裏切られました。生き残るために見に付けた、ハンター達の凄技。獲物を見つけたら、ハンターチャンス!
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年7月7日 ]■海のハンター に関するツイート