IM
    レポート
    Modern Beauty -フランスの絵画と化粧道具、ファッションにみる美の近代
    ポーラ美術館 | 神奈川県
    見初めた女性が、扇を落としたら?
    美に憧れ、美を求める女性の想いは、昔も今も変わりません。フアッショナブルな女性を描いた西洋絵画や、古今東西の化粧道具など「女性の美」に関わる所蔵品も多いポーラ美術館で、ちょっと変わった企画展が開催中です。
    (左から)ルイ=ガブリエル=ウジェーヌ・イザベー《テュイルリー宮殿庭園のマティルド皇女》1855年 山寺後藤美術館 / 《イヴニング・ドレス》1860年頃 文化学園服飾博物館
    会場
    エミール・ガレの香水瓶
    19世紀の上流階級の女性の化粧部屋
    バッグやヘアアクセサリーなど
    『シック・パリジャン』(ファッション・プレート)1910年代
    (上から)レースの扇・ヴァイオリン奏者と妖精 1895年頃 / 木の扇・ヴェールの女性 1899年
    豪華な化粧セットが並ぶ
    (左から)《イヴニング・ドレス》1923年頃 文化学園服飾博物館 / ジュール・パスキン《ギカ公女》1921年 公益財団法人ひろしま美術館
    展覧会はポーラ美術館が収蔵する19~20世紀の絵画を中心に、ファッションの変遷を紹介するもの。ただ、絵画だけでなく充実した資料類が本展の大きな特徴です。文化学園服飾博物館から計10着のドレスが出品されており、中には絵画から飛び出てきたようなドレスも展示されています。

    展覧会の冒頭は詩人・批評家のシャルル・ボードレールから。それまでの絵画は普遍的な事象が描かれていましたが、ボードレールは移ろいやすいもの、一時的なものの中にある「近代性」の表現を推奨。都市風俗は絵画の主題になり、中でもファッションは重要なテーマになりました。


    絵画とドレスが並ぶ会場

    仕立屋の家に生まれたルノワール。彼の作品には魅力的なファッションの女性がしばしば登場し、ポーラ美術館のアイコンといえるルノワールの《レースの帽子の少女》もそのひとりです。

    よく見ると、少女が着ている服は《髪かざり》のモデルが来ている服と同じ。このドレスは同時期に描かれた他の作品にも登場するため、ルノワールがモデルに着せていたと考えられます。

    展覧会のメインビジュアルは、マネが描いた《ベンチにて》。モデルは若手女優で高級娼婦でもあったジャンヌ・ドマルシーで、パステルを用いてやわらかな女性の肌を巧みに表現しています。

    展示室1の奥には、19世紀の上流階級の女性の化粧部屋も再現されています。豪華な化粧セットはアール・ヌーヴォーのデザイン。100年前にも、髪にウェーブを付ける道具「アルコールランプ付折りたたみコテ」があった事がわかります。


    美を求める想いは不変です

    ファッションの広まりに大きく貢献したのが、印刷技術の進歩。貴族など上流階級が生んだ最新のモードは、パリで出版されたファッション雑誌によって庶民まで拡散していきました。

    ファッション誌などに挟み込まれていたのが、流行のドレスや髪型を描いた「ファッション・プレート」です。なかには非常に手間がかかる一方で微妙な色彩が表現できる「ポショワール技法」で作られたものもあり、美への関心の高まりがうかがえます。

    当時の最新メディアだった版画を通じて女性のファッションが進歩していくのは、日本の浮世絵とも良く似ています。


    メディアの進歩は社会を変えます

    上流階級の女性に欠かせないファッションアイテムが、扇。実用として用いるよりも、コミュニケーションツールとして重用されました。

    当時は男女の出会いの機会も限られていた時代。扇の使い方で意識の疎通を図るという、野球のブロックサインのような手法が生まれていきました。

    例えば、扇で頬を横になぞるのは「あなたを愛している」の意味。扇の取っ手を唇にあてたら「私にキスして」、扇を落とすのは「友達でいましょう」のサインです。

    扇を用いた暗号は19世紀にスペイン語で手引書が出版され、その後ドイツ語、英語に翻訳されるほど広まりました。


    ちなみに、扇で手をなぞると「あなたなんか大嫌い」です

    通常の美術展とはひと味違うユニークな企画。ポーラ美術館はリピーター率が高く(約3割)、固定ファンにも満足していただくよう新しい切り口の展覧会を目指す中で企画されました。

    偶然にも今シーズンはファッション関連の展覧会があちこちで開催中。本展と、世田谷美術館「ファッション史の愉しみ ―石山彰ブック・コレクションより―」(2月13日~4月10日)、三菱一号館美術館「PARIS オートクチュール ─ 世界に一つだけの服」(3月4日~5月22日)で、各館の半券提示による相互割引も実施中です。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年4月2日 ]



    ■ポーラ美術館 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2016年3月19日(土)~9月4日(日)
    会期終了
    開館時間
    9:00~17:00(入館は16:30まで)
    休館日
    6月16日(木)
    住所
    神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
    電話 0460-84-2111(代表)
    公式サイト http://www.polamuseum.or.jp/sp/mb_2016/
    展覧会詳細 「Modern Beauty -フランスの絵画と化粧道具、ファッションにみる美の近代」 詳細情報
    おすすめレポート
    学芸員募集
    東山旧岸邸 正社員・契約社員 募集! [東山旧岸邸]
    静岡県
    鎌倉 報国寺 学芸員募集(正職員) [報国寺]
    神奈川県
    【新卒/経験者OK】都内環境啓発施設、常勤スタッフ(コーディネーター)募集中! [武蔵野市環境啓発施設「むさしのエコreゾート」、エコギャラリー新宿(新宿区立環境学習情報センター・区民ギャラリー) など]
    東京都
    公益財団法人日本博物館協会 事業部門マネージャーの募集 [公益財団法人日本博物館協会]
    東京都
    東京国立博物館アソシエイトフェロー(日本考古/書跡・歴史資料)募集 [東京国立博物館(台東区上野公園13-9)]
    東京都
    展覧会ランキング
    1
    国立西洋美術館 | 東京都
    西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで
    開催中[あと67日]
    2025年3月11日(火)〜6月8日(日)
    2
    東京国立博物館 | 東京都
    イマーシブシアター 新ジャポニズム ~縄文から浮世絵 そしてアニメへ~
    開催中[あと123日]
    2025年3月25日(火)〜8月3日(日)
    3
    東京都美術館 | 東京都
    ミロ展
    開催中[あと95日]
    2025年3月1日(土)〜7月6日(日)
    4
    ラムセス・ミュージアム at CREVIA BASE Tokyo(豊洲) | 東京都
    ACN ラムセス大王展 ファラオたちの黄金
    開催中[あと158日]
    2025年3月8日(土)〜9月7日(日)
    5
    国立科学博物館 | 東京都
    特別展「古代DNA ―日本人のきた道―」
    開催中[あと74日]
    2025年3月15日(土)〜6月15日(日)