ジョン・ラセター、エド・キャットマル、そしてスティーブ・ジョブズが立ち上げたピクサー。最新鋭のCG映画で知られるピクサーに、手描きのドローイングや模型制作などを手掛けるアーティストが数多くいる事はあまり知られていないと思います。
映画制作の源となった、さまざまなアートワークを紹介する本展。ピクサーの周年記念展は20周年・25周年が世界各所で開催されていますが(日本では森アーツセンターギャラリーなどで20周年展が開催)、本展は最新作の「アーロと少年」までを対象に、約500点の資料を紹介します。
最初に紹介される長編作品は「トイ・ストーリー」三部作。1995年に公開された世界初のフルCG長編アニメーションで、いずれも大ヒット。映画に登場するウッディとバズは、ピクサーの顔ともいえる存在です。
展覧会イントロには、電気スタンドが主人公の「ルクソーJr.」(ピクサー初作品)。「トイ・ストーリー」は大きなエリアで紹介されています上のフロアに進むと、作品ごとにアートワークが紹介されます。
監督が承認したキャラクターは、まずアーティストがモデルパケット(キャラクターの仕様を示すドローイングの素材)を制作。コンピュータモデルはこれに沿って作られます。
さらに彫刻家は、粘土で立体模型を制作。CG映画に模型は登場しませんが、これによってあらゆる角度からキャラクターが検討できます。
さらに意外に思えるのが、映画制作の約4分の3がストーリーに費やされる事。全作品がヒットという快挙は、コンセプト作り、脚本執筆、ストーリーボードとストーリーリール(絵コンテに音も加えた、映画のモックアップ)制作という、入念な進行が支えています。
「バグズ・ライフ」「モンスターズ・インク」から最新作「アーロと少年」まで、長編映画のアートワークを展示会場1階の中ほどには、ピクサーの制作プロセスを詳しく紹介しているコーナーがあります。
ここでは最終的な映像に至るまでの工程が一覧できるように、順を追って解説。モニターではピクサーのアーティストによるインタビュー映像も紹介されていますので、ファンはもちろんの事、映像クリエイターを目指す方は多いに刺激を受けると思います。
ピクサー映画ができるまで展覧会のためのコンテンツも用意されています。
アニメーションの基本原理を説明するのが「トイ・ストーリー ゾートロープ」。「トイ・ストーリー」「トイ・ストーリー2」に登場する3Dキャラクターを円盤に設置し、回転させてストロボを当てると、ご覧のとおりです。
大型スクリーンでは、アーティストが描いたドローイングが映像となってピクサーの世界観を表現する「アートスケープ」を上映。ゆったりと時間が流れるインスタレーション作品です。
トイ・ストーリー ゾートロープ会場には2つのミニシアターも設置され、シアター1では初期(1987~1989)の短編映画3本、シアター2では近年制作の短編映画が3期に分けて上映中。入口近くには「モンスターズ・インク」のキャラクターと記念撮影ができるフォトスポットも用意されています。オリジナルグッズも含め、ショップも充実しています。
©Disney/Pixar
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年3月4日 ]※
東京都現代美術館は、本展の後に大規模改修工事のため休館となります。
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