2014年秋に「
ウフィツィ美術館展 黄金のルネサンス ボッティチェリからブロンヅィーノまで」、2015年春にも「
ボッティチェリとルネサンス フィレンツェの富と美」と、ボッティチェリの名を冠した展覧会が続いていますが、今回は過去最大規模。世界各地から20点を超えるボッティチェリ作品が集まった、華やかな展覧会となりました。
構成としてはボッティチェリ作品は第3章ですが、冒頭に1点、ボッティチェリ作品を展示。フィレンツェのラーマ家からの注文で描かれた《ラーマ家の東方三博士の礼拝》です。
ボッティチェリが描いた「東方三博士の礼拝」図としては、最も名高い作品。ピラミッド型の頂点に聖母子を配した、安定した構図です。画面右端のガウンの男はボッティチェリの自画像と考えられています。
さらにこのフロアでは、15世紀フィレンツェの繁栄を紹介するメディチ家ゆかりの財宝や、ボッティチェリの師であるフィリッポ・リッピの作品などが紹介されます。
会場入口から。冒頭に《ラーマ家の東方三博士の礼拝》が登場上階に上がると、本格的にボッティチェリ作品が登場。展覧会メインビジュアルの《聖母子(書物の聖母)》は、奥に展示されています。
伏し目がちにイエスを見つめる聖母、愛らしいイエスの頬から顎にかけての繊細な表現は見事。500年以上前に描かれた作品ですが、驚くほど色彩は鮮やかです。金箔やラピスラズリなど高価な材料が使われている事から、重要な注文制作だったと考えられています。ミラノのポルディ・ペッツォーリ美術館の所蔵、今回が初来日となります。
サンドロ・ボッティチェリ《聖母子(書物の聖母)》ポルディ・ペッツォーリ美術館展覧会開催が発表された後に、急遽出品が決まったのが《アペレスの誹謗(ラ・カルンニア)》。古代ギリシャの画家アペレスが描いたものの現存しない作品を、ボッティチェリが復元しようと描いたものです。
誹謗中傷にあった人物の悲惨さを、寓意的に表現した作品。中央の美しい女性が「誹謗」で、後ろで仕える二人は「欺瞞」と「嫉妬」。髪を掴まれる男性が「無実」、右の男性「不正」に耳打ちをする「無知」と「猜疑」、一番左が「真実」です。多くの人物をダイナミックに構成するのは、ボッティチェリの真骨頂。こちらも日本初公開です。
サンドロ・ボッティチェリ《アペレスの誹謗(ラ・カルンニア)》ウフィツィ美術館現在では揺るぎない評価を得ているボッティチェリですが、存命中はその座を脅かすライバルもいました。最盛期にはボッティチェリより仕事の依頼が多かったその男は、フィリッピーノ・リッピ。ボッティチェリの師であるフィリッポ・リッピの息子で、ボッティチェリの元で修行を積んだ弟子でもありました。
画業の初期はボッティチェリ風の表現が多かったものの、次第に独自の様式を確立。15世紀半ばから1504年に亡くなるまでは、イタリアで最も高い評価を得ていました。会場最後の第4章は、全てフィリッピーノ・リッピの作品です。
第4章「フィリッピーノ・リッピ、ボッティチェリの弟子からライバルへ」長らく、Adobe Illustrator(パソコン用のドローイングソフト)のパッケージで親しまれたボッティチェリ。美術に詳しくない方でも、例のミラノ風ドリアの店で一度は目にしていると思います。「線の詩人」ともいわれる、繊細で優美な表現をお楽しみください。
この冬の東京は、大規模な西洋絵画展が目白押し。本展と「
フェルメールとレンブラント:17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち展」、また本展と「
特別展 レオナルド・ダ・ヴィンチ 天才の挑戦」で、半券提示で100円引きの相互割引も実施されています。ハシゴする方は、お忘れなく。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫、2016年1月15日 ]■東京都美術館 ボッティチェリ展 に関するツイート