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    レポート
    横浜発 おもしろい画家:中島清之 ─ 日本画の迷宮
    横浜美術館 | 神奈川県
    変容し続けた、院展の重鎮
    大正時代から戦後まで院展の中核で活躍した中島清之(なかじまきよし:1899-1989)。同じ作家とは思えない多様な作品を描き、まさに「おもしろい」という形容がしっくりくる画家といえます。長い画業を俯瞰する展覧会が、生涯の大部分を過ごした横浜で開催中です。
    (左から)《喝采》1973年 / 《喝采》(小下絵)1973年頃
    (左から)《蓮池》1926年 / 《胡瓜》1924年
    (左から)《銀座B》1936年 / 《銀座A》1936年
    (左から)《流れと草花》1944年 / 《湯あみ》1938年頃
    (左から)《古代より(二)》1952年 / 《顔》1960年
    (左から)《梅川》1959年 / 《浄瑠璃 山城少掾》1956年 / 《浄瑠璃 鶴澤清六》1956年
    (左から)《霧氷》1963年 / 《賢者》1958年
    《緑扇》1975年
    《鶴図》(三溪園臨春閣襖絵)1977年
    京都で生まれた中島清之。画家を目指し、横浜の叔父を頼って16歳で上京しました。着物姿の清之を見た叔父は、すぐに洋服を買ってくれたそうですが、当時(大正4年)は着物は珍しくなかった時代。そんなハイカラな横浜の空気は、清之の画業にも影響を与えたと思われます。

    会社務めをしながら、松本楓湖の安雅堂画塾で研鑽を積んだ清之。粉本の模写に励むと同時にスケッチ魔でもあり、関東大震災の様子もスケッチで描いた後に画巻にしています。

    25歳で描いた《桃の木》(本展には未出品)が、院展でいきなり入選。大勢の記者が家に押しかけたため、清之の母は息子が悪事を働いたと勘違いし「早く裏から逃げなさい」と慌てたそうです。


    第1章「青年期の研鑽」

    日本全体が戦争に向かう中、清之も1938(昭和13)年に慰問使として中国に赴きます。兵士の似顔絵などを描く一方で、当時の風俗を題材にした作品も制作しました。

    空襲が激しくなると、家族とともに小布施(長野県)に疎開。1947(昭和22)年まで3年間過ごし、美しい自然と素朴で親切な人々との交流は、画業にも好影響を与えたと本人が語っています。

    二女三男に恵まれた清之(次女のみ夭折)。父と同じ日本画の道に進んで活躍している中島千波は末っ子で、会場には幼少の千波を描いたスケッチも展示されています。


    第2章「戦中から戦後へ」

    戦後に再開した院展でも活躍。1952(昭和27)年には日本美術院の同人(審査員)に推挙されるなど重鎮といえる立場になりますが、スタイルの定着を拒否するかのように、表現上の挑戦を続けていきます。

    時代を席巻していたアンフォルメルを意識した《顔》を制作したのは、実に61歳の時。さらに歩を進め、幾何学抽象の作品も手掛けています。

    夫婦を描いた《椿笑園の主達》は、抽象的に描かれたた人物と、具象で描かれた畳や猫などが違和感なく同居した作品。清之ならではの構成力といえます。


    第3章「円熟期の画業」

    展覧会メインビジュアルの《喝采》は、74歳の時の作品。「喝采」を熱唱する、ちあきなおみを描いた作品です。

    清之はテレビで見たちあきの佇まいに惹かれ、作品にする事を決断。歌謡番組の収録を見に行くほど入れ込んで、作品を仕上げました。隣に展示されている下絵とはだいぶ違いますが、制作途中を知人に見られた事が嫌で、がらっと変えてしまいました。

    ここまで直接的なエンターテインメントを描いた作品が院展に出るのは珍しく、発表当時も多いに話題を呼びました。清之は後にテレビのワイドショーでちあきと共演、院展の会場で一緒に作品も鑑賞しています。


    第3章「円熟期の画業」

    会場後半にある三溪園臨春閣の襖絵は、琳派研究の成果を発揮した大作。清之の画業の集大成といえる作品です。全11室分を依頼されましたが、残念ながら途中で病のため断念。以後の制作は千波に引き継がれています。

    直接本展とは関係ありませんが、晩年の五姓田義松は若き日の清之のご近所さんでした。すでに画壇の主流から外れていた義松は酒浸りになっており、酒を飲んで暴れる義松を清之は兄たちと一緒におさえに行く事も。ほどなくして義松は寂しく死去した事もあり、清之の両親は清之が絵描きになるのを嫌がったそうです。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年11月2日 ]

    ※会期中に展示替えがあります



    ■横浜美術館 中島清之 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2015年11月3日(火・祝)~2016年1月11日(月・祝)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00
    (入館は閉館の30分前まで)
    休館日
    木曜日、2015年12月29日(火)~2016年1月2日(土)
    住所
    神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
    電話 045-221-0300
    公式サイト http://yokohama.art.museum/
    料金
    一般 1,200円/大学・高校生 800円/中学生 400円
    ※団体は有料20名以上で各100円引き(要事前予約)
    ※2015年11月3日(火・祝)は無料
    ※毎週土曜日は、高校生以下無料(要生徒手帳、学生証)
    ※障がい者手帳をお持ちの方と介護の方(1名)は無料
    展覧会詳細 横浜発 おもしろい画家:中島清之 ─ 日本画の迷宮 詳細情報
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