右から「ニュルンベルクの鉄の処女」と「ギロチン」。左奥は「鋸引(のこぎりびき)の穴晒箱」
ユニークな常設展のミュージアムも教えて欲しい! という声にお応えして、個性的なミュージアムを紹介する新コーナーがスタート。初回のご紹介は明治大学博物館(刑事部門)です。「刑事」と言っても展示されているのは警察手帳や手錠ではありません。扉を閉めると人が串刺しになる道具、獄門(さらし首)の台、火刑(火あぶり)の柱・・・最初からかなりヘビーな世界をご案内します。
法令、禁令を墨で書いた江戸時代の「高札(こうさつ)」など
前半は刺又や十手など、江戸時代の捕者具
十手にもいろいろな種類があります
有名な拷問「石抱責」。脇から石を揺することもあるとか…
右は「鋸引仕置」。左の平均台のようなものが「獄門台」
目玉展示の2つ
なぜ明大に拷問具が?
JR御茶ノ水駅から徒歩5分。近代的なガラス張りのビルの地下に、展示資料としては国内唯一のギロチンがあることをご存じでしょうか? 訪れたのは明治大学博物館。2004年の新校舎オープンと同時に開館しました。
その歴史は1928(昭和8)年に遡ります。建学の理念である「権利自由」にもとづいて、当時の法学部教授らが刑事関連資料を収集しはじめたのがきっかけとなりました。拷問・処刑具での人権抑圧の歴史を踏まえ、人間尊重の理解を深めてもらおう、というコンセプトです。
集められた刑事資料、考古学資料、商品資料は1950年代に3つの博物館として別々に開館。何回かの移転の後に、3館の統合施設として現在の新博物館が誕生しました。
奥に進むと徐々に…
常設展示室は地下2階、刑事部門はフロアの中央です。最初は“お触れ書き”にあたる「高札(こうさつ)」や十手など。このあたりは時代劇の小道具のようですが、奥に行くと徐々にヒートアップしてきます。
「石抱責(いしだきぜめ)」は、三角形の木を並べた台に正座させて、上に石を置いて自白を強いる江戸時代の拷問。マネキンの展示ですが、見るだけで脛がムズムズしてきます。
鋸引(のこぎりびき)の奥にあるのは、獄門(さらし首)の台。剣山のように針が出ているのは、もちろん切った首を刺して固定していた、という事です。
ギロチンと並ぶ目玉が、ニュルンベルクの鉄の処女。中世ドイツの拷問・処刑具で、内側に無数の針があり、人間を入れて扉を閉めると針が体を貫くという凄まじさ。こんな道具にもかかわらず、上部にはなぜか顔の装飾が付いています。これを作った職人はどういう思いだったのでしょうか・・・。
処刑見物は庶民の娯楽
「娯楽の少なかった前近代において、処刑見物は庶民の娯楽でした」とは、学芸員の外山徹さん。有名な旅行会社がギロチン処刑を見せるツアーを組み、イギリスでは刑場近くの建物の2階に桟敷席が設けられたそうです。「人権の尊重」という概念は、まだ最近のことなのです。
気軽に見るような内容では無いと思いますが、実はこの博物館は、知る人ぞ知る大人気スポット。2012年5月にはリニューアルオープンから8年強で来館者50万人を達成しました。入場料は無料ですので“お気軽に”お越しください。(取材:2012年7月23日 写真・文:インターネットミュージアム)