八王子市夢美術館では戦後日本を代表する建築家が設計した住宅作品の展覧会を開催します。
戦後の日本ほど個人住宅という分野を発達させた国は他にありません。特に1950年代から70年代までの個人住宅には傑作といわれる作品が数多く存在し、それらは今日の建築家にも大きな影響をあたえています。本展は、そうした時代に手がけられたいわば伝説となったといえる16の住宅作品について、16人の建築家のコンセプトとともに紹介するものです。多くの国家的なプロジェクトを手がけた丹下健三が設計した1953年竣工の《住居》からはじまり、1976年に竣工した伊東豊雄の《中野本町の家》と安藤忠雄の《住吉の長屋》まで、ここでとり上げる16の住宅作品の様相は実に様々です。伝統の中にそのヒントを得たもの、住宅にしかできないことを追求したもの、思索の場として住宅を考えたもの、都市とのかかわりの中で住宅を捉え表現したものなど、16の住宅作品は多様な課題に向き合い「住」について提起しています。戦後日本の住環境は、少ない建設費、極小や不整形な敷地、あるいは「うさぎ小屋」や「うなぎの寝床」といった言葉に代表されるように必ずしも恵まれた条件下にあったとはいえませんが、こうした限られた条件を積極的に読み替え、珠玉の空間を生み出した若き日の建築家の作品もここには含まれています。世界的に見ても特異な環境から発展を遂げた戦後日本の住宅。その中でも最も熱い視線が注がれた時代の16の住宅作品を同時に眺めてみることは、現代に住む我々に新たな「住」の視点を見出す機会を提供してくれるはずです。