茶の湯は中国より抹茶や煎茶の喫茶法が伝来し、日本の文化や風土に合わせて独自の変容を見せていますが、茶の湯における床飾りは室町時代の足利将軍家の書院飾りより始まります。書院には押板と呼ばれる床の原型がつくられ、掛物や三具足(花瓶・燭台・香炉)などを飾っていました。珠光(1423 - 1502)によって侘茶が創始され、時代とともに茶の湯が多様化すると、床にはさまざまな道具が飾られるようになります。
亭主の趣向をあらわすものとして床には掛物がかけられますが、掛物のほかに花・花生や茶壺などが主役となって茶席を飾っている場面も見られます。江戸時代に記された利休の茶の湯を伝える『南方録』には、「掛物ほど第一の道具はなし」と記されています。茶の湯の歴史を振り返ってみると、足利将軍家では唐絵が珍重され、侘茶が創始されると茶禅一味の思想から墨跡が第一とされます。そして、近代では物語絵や古筆がかけられるなど、時代による好みが反映され多くの道具が見出されてきました。さらには、煎茶では文人趣味とあいまって茶の湯とは趣向が異なります。
そこで、茶の湯や煎茶においてどのような書や画が掛物として茶席を飾ってきたのか、出光美術館のコレクションを中心に紐解いてみたいと思います。