『辺要分界図考(南部家本)』より「舟ヲ犬ニ牽スル図」
もりおか歴史文化館江戸時代末期の探検家・近藤守重(重蔵)により文化元(1804)年に著された『辺要分界図考』第3 冊の一部を抜粋した資料。上下2 巻から成り、「チュプカ(千島列島)」と「樺太(サハリン)」の自然と文化について記されています。
下巻のこの場面に描かれるのは、舟につながれたイヌたちです。オスイヌ数頭を舟につなぎその前にメスイヌを放すことで、メスを追うオスの力を使って舟を進める様子である旨の解説が添えられています。描かれた場面を詳しく知った上で再び作品に目を向けると、後ろを振り返る白いメスイヌの表情がなんとも色っぽく見えてきます。
担当者からのコメント:現在の岩手県北上市以北から青森県東部にかけて広がっていた盛岡藩は、江戸時代後期、幕命によって蝦夷地警衛の任に着きました。モロラン(現在の室蘭)に陣屋を築き、多くの藩士たちが現在の北海道に赴いたのです。盛岡藩にとって身近でありながらも謎に包まれた存在であった蝦夷地の情報を収集することは、単なる興味の範囲を超えて、幕末へと向かう動乱期を生き残るために非常に重要なことでした。本資料のほかにも、盛岡藩主南部家には数多くの蝦夷地関連資料が残されており、その関心の高さがうかがえます。