シルクロードの要衝に位置し「文明の十字路」と称されたアフガニスタン。多彩な文化が華開いたこの地には、多くの考古遺跡や遺物が残っています。
重要な文化財の多くはアフガニスタン国立博物館に所蔵されていましたが、政治的な混乱の中で博物館は被災。タリバン政権はバーミヤーン大仏まで爆破し、世界に衝撃を与えました。
とりわけ貴重な文化財を秘密裏に運び出したのは、勇気ある博物館職員たち。大統領府地下の金庫などに移し、家族にもその存在を明かさずに、14年もの間守り続けたのです。
展覧会はアフガニスタンの文化遺産の復興を支援する国際巡回展。4カ所の遺跡から出土した至宝、約200件以上が紹介されています。
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第1章「テペ・フロール」、第2章「アイ・ハヌム」
豪華な金製品が並ぶのは、3章「ティリヤ・テペ」。この地に侵入してきた遊牧民の王族が眠る黄金に彩られた墓で、1世紀頃の遺跡です
展示品の中で最も目をひくのが、黄金の冠。樹木型の飾りは、奈良県藤ノ木古墳で出土した国宝・金銅製冠と似ています。このような形の冠は韓国南西部からも出土しており、古代オリエントからティリヤ・テペ→中国→百済→日本と伝わった可能性も指摘されています。
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第3章「ティリヤ・テペ」
クシャーン帝国の夏の都として栄えたのが、ベグラム。孫悟空で知られる玄奘三蔵も、この地に立ち寄っています。
この地で見つかったのは、インドの象牙製品、エジプトの石製品、アレキサンドリアのガラス製品、ローマの青銅器など。ローマ文化圏の製品は、海洋交易によってインド洋沿岸部にもたらされ、陸路を通ってベグラムに至ったと考えられています。
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第4章「ベグラム」
今回の展覧会では、日本で「文化財難民」として保護・保管された品々も展示されています。
流出文化財の保護に尽力したのは、シルクロードの作品で知られる日本画家の故・平山郁夫氏。平山氏はブラックマーケットに流れるアフガニスタンの文化財に心を痛め「流出文化財保護日本委員会」を設立。日本に流れついた文化財を保護するとともに、壁画片については展示に必要な保存修復も行ってきました。
保護してきた文化財102件は、アフガニスタンへの返還が決定。会場には、うち15件が展示されました。
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第5章「アフガニスタン流出文化財」
本展会場の東京国立博物館 表慶館に掲げられた「A nation stays alive when its culture stays alive」(自らの文化が生き続ける限り、その国は生きながらえる)は、再開を期してアフガニスタン国立博物館入口に掲げられたメッセージ。展覧会スペシャルナビゲーターの鈴木亮平さんが登場する、会場冒頭の映像も心を打たれます。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年4月11日 ]
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