宝石カット職人の息子アルフレッド・ヴァン クリーフと、宝石商の娘 エステル・アーペルが結婚して生まれたヴァン クリーフ&アーペル。1925年のパリ万博(アール・デコ展)で大賞に輝いて世界的な名声を獲得、以後も創造性豊かな作品を次々に発表しています。
ヴァン クリーフ&アーペルは世界各国で展覧会を開催しており、昨年はシンガポールのアートサイエンスミュージアムで「宝石にみる芸術と科学」展を開催。今年は京都という事もあり、ヴァン クリーフ&アーペルのハイジュエリーと日本の伝統工芸を対比させて紹介しています。
会場に入ると、暗い展示室にジュエリーが浮かび上がるよう。建築家の藤本壮介さんによる会場デザインが作品を引き立てます。
展覧会は3章構成で、まず「ヴァン クリーフ&アーペルの歴史」から。檜の長い一枚板のカウンターに、ヴァン クリーフ&アーペルの創立から現代に至るまでの作品80点が展示されています。
宝石を支える爪の部分を表から見せない特殊な技巧「ミステリーセッティング」は、1930年代に開発。特許登録されたこの技術は、今でもヴァン クリーフ&アーペルの象徴的な技術として知られています。
1章「ヴァン クリーフ&アーペルの歴史」続いて2章は「技を極める」。明治時代を中心につくられた、いわゆる「超絶技巧」の工芸品と、ヴァン クリーフ&アーペルのハイジュエリーを対比させた展示です。ガラスケースをレイヤーに見立てて、作品が奥に広がっていきます。
展示されている日本の工芸品は七宝、自在金物、陶磁器、金属工芸、牙彫、刺繍絵画など。安藤緑山や並河靖之など、最近の展覧会で注目を集めた作家の名前もあります。
会場中ほどには映像でヴァン クリーフ&アーペルの工房も紹介されており、ハイジュエリー制作のプロセスも紹介。「自然光で確認するため、天気の悪い日は作業を行わない事もある」という徹底ぶりには驚かされます。
2章「技を極める」3章は「文化の融合と未来」。ここにはヴァン クリーフ&アーペルのハイジュエリーとともに、現代日本の工芸作家として、森口邦彦(重要無形文化財「友禅」保持者)、北村武資(重要無形文化財「羅」「経錦」保持者)などが並びます。
ここではアクリルケースが竹林のように林立しており、展示室を縫うように進んでいきます。好きなジュエリーを好きな方向からお楽しみいただけます。
3章「文化の融合と未来」ヴァン クリーフ&アーペルの展覧会にはルールがあり、「1カ国、1都市、1美術館」でしか開催されません。すなわち東京への巡回も無し。ただ、幸いにも会期は長めなので、今から予定をたてても十分間に合います。磨き抜かれた空間で眼福のひと時をお過ごしください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年6月6日 ]■技を極める ヴァン クリーフ&アーペル に関するツイート