文学と美術を融合させた絵巻。日本で独自の発展を遂げた絵巻は、美術ファンに人気があり、特定の絵巻を中心にした展覧会は過去に何度も開かれています。
そもそも絵巻は手に取って、開きながら読み進めるもの。鑑賞者との距離が極めて近いメディアのはずですが、残念ながら今は展示ケースの中で眺めるしかありません。
ならば絵巻に想いを寄せた人に着目して、その想いを掘り下げる事で、絵巻と鑑賞者の距離を縮めよう、というのが本展の意図。絵巻だけでなく日記や目録などの関連資料も紹介しながら、「絵巻マニア」の心に迫ります。
会場は「絵巻マニア」別で、序章の後白河院から。蓮華王院(本堂は三十三間堂)の宝蔵に多くの絵巻を納めました。
第1章は花園院。高階隆兼(たかしなのたかかね)はこの時代に活躍し、独特の絵巻様式を生み出しました。
序章「後白河院」、第1章「花園院」第2章は後崇光院・後花園院父子。後崇光院の日記には、絵巻の貸し借りや制作について、数多くの記述がみられます。
第3章は三条西実隆。公喞で文化人だった実隆は、「桑実寺縁起絵巻」ではチーフプロデューサー的な役割を果たしました。
第2章「後崇光院・後花園院 父子」、第3章「三条西実隆」第4章は足利将軍家。京都に幕府を開いた足利家は、武家でありながら貴族の側面も。絵巻は文化的な資質を示すためのツールとして用いられました。
そして終章は松平定信。寛政の改革を主導した倹約志向の老中ですが、実は無類の絵巻好き。「古画類聚」は絵巻などから当時の風俗や調度などを抜き出して編纂しました。
第4章「足利将軍家」、終章「松平定信」撮影の制限もあって、アップで作品をご紹介できないのが残念ですが、展示作品は国宝や重要文化財も数多く含まれる一級品ばかり。かなり見ごたえがあります。
細かな展示替え・場面替えがありますので、出品期間は公式サイトの
出品作品リストでご確認ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年3月28日 ]■絵巻マニア列伝 に関するツイート