国宝・重要文化財の数が全国4位の滋賀県。優れた仏像が各所に残っていますが、中でも櫟野寺は重要文化財の平安仏を20体も所蔵しており、平安彫刻の宝庫として特筆される存在です。
櫟野寺は33年に一度、大開帳が行われており、次の大開帳(2018年)に向けて本堂と文化財収蔵庫(宝物殿)の改修が決定。この機に、20体すべてが初めて寺外で公開される事になりました。
会場に入ると、中央に鎮座しているのが本尊の《十一面観音菩薩坐像》です。像高は3.12m、台座と光背を入れた総高は5.31mと、圧倒的な大きさ。重要文化財の坐像としては日本最大です(国宝の坐像はありません)。
巨大な像ですが、頭から胴までを1本の木から掘り出した一木造(いちぼくづくり)。お寺では厨子に入っているため正面からしか見られませんが、会場では360度まわっての鑑賞が可能。身体の厚みや、頭上の11面まで、じっくりとお楽しみいただけます。
重要文化財《十一面観音菩薩坐像》本尊の大きさに目を奪われますが、その後ろで展示されている《薬師如来坐像》も像高2.22mの大作です。2mを超える大きな座像が2体出展される展覧会というのも、かなり貴重な機会といえます。
人々の病気平癒や延命長寿をつかさどる薬師如来は、左手の薬壺が目印。穏やかな表現はいわゆる定朝様(じょうちょうよう)で、仏師・定朝が確立したスタイルです。
重要文化財《薬師如来坐像》他にも、怒りの表情ながら親しみやすさも感じる《毘沙門天立像》、像内の銘文から文治3年(1187)に造られた事が分かる《地蔵菩薩坐像》、11体出展されている《観音菩薩立像》などがずらり。会場の本館特別5室は厳かな雰囲気に包まれています。
展示されている仏像を良く見ると、顔つきやプロポーションの類似性を感じますが、これは「甲賀様式」とされるスタイル。その特徴は公式図録に詳しく解説されていますので、興味がある方はぜひご覧ください。
会場展覧会の開催を記念して、みうらじゅん氏といとうせいこう氏による「櫟(ラク)」普及委員会も発足、オリジナルグッズも制作されました。「フェリシモおてらぶ」とのコラボグッズや、展覧会特別バージョンのご朱印も特設ショップで販売されています。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年9月12日 ]※展示作品はすべて滋賀・櫟野寺蔵
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