日伊国交樹立150周年を記念した本展。企画展会場の外から「アトランティコ手稿」に基づく飛行機の模型が展示されており、期待感が高まります。
レオナルドが67歳で没したのは1519年。長い歴史の中で伝説化と神格化が進んだレオナルドの肖像から、展覧会は始まります。
プラトンなど古代ギリシャの賢人のイメージで表されてきたレオナルド。ロマン主義時代に描かれた版画は、聖者のような風貌です。王の腕の中で没するのは、ジョルジョ・ヴァザーリ「芸術化列伝」に記されたエピソードですが、信憑性は定かではありません。
神格化されたレオナルド自身の研究や思想をノートに書きとめていたレオナルド。いくつかの「手稿」が現存しており、本展では『鳥の飛翔に関する手稿』が初来日しました。
「空を飛ぶ」という人類の悲願を実現するため、レオナルドは鳥を研究しました。鳥の観察記録のほかスケッチも描かれており、男性の肖像は自画像と推定されています。
この手稿はナポレオンに持ち去られたり、盗まれてバラバラにされりと数奇な運命を辿りましたが、現在はトリノ王立図書館に全紙葉が収蔵されています。
『鳥の飛翔に関する手稿』ヴェネツィアのアカデミア美術館素描版画室からは、過去最多となる7点の真筆素描(うち1点は弟子との共作)が出展されました。こちらも日本初公開です。
フォルムを確認するかのように、丹念に描かれた花や子どもの素描。通り一遍の知識に頼らずに、実際に手を動かす事で、対象を自らのものにする姿勢が垣間見えます。
レオナルドの素描メインビジュアルの《糸巻きの聖母》は、会場の後半です。1501年頃に描かれたもので、モナ・リザよりも前の作品です。
得意のスフマート(モナ・リザにもみられる、ぼかし技法)を使って、柔らかく立体感を表した聖母子。ゴツゴツとした岩のテクスチャからは、地質学者としてのレオナルドの姿も伺えます。背景は後世の画家による加筆ですが、赤外線調査の結果、左側には歩行器と人物群があった事も分かっています。
実はこの作品も2003年に盗まれていますが、2007年に無事に発見されました。今回が初来日、英国外から出るのも77年ぶりです。
レオナルド・ダ・ヴィンチ《糸巻きの聖母》会場には、レオナルド工房や追随者による作品も。レオナルドの作品とはかなり印象が異なる模写も展示されています。
さらに、素描から忠実に再現した関連模型も紹介。軍事技師から治水事業まで幅広く活躍したレオナルドの実像に迫ります。
関連模型も展示大きな注目を集めそうな展覧会ですが、巡回はせずに
江戸東京博物館だけでの開催です。本展に限りませんが、大きな企画展は会期後半は必ず混雑します。お早目にどうぞ。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年1月15日 ]■レオナルド・ダ・ヴィンチ 天才の挑戦 に関するツイート