展覧会はメトロポリタン美術館、ロンドン・ナショナル・ギャラリー、アムステルダム国立美術館の所蔵品を中心に、60点を紹介するもの。展覧会に慣れた方なら「60点」をやや少な目に思うかもしれませんが、出展作はすべて油彩。素描や習作による「かさ上げ」が無いため、点数以上の充実ぶりをお楽しみいただけると思います。
会場は4章構成で、メインは2章の「オランダ黄金時代」。この章がさらにジャンル別となっており「風景画」「イタリア的風景画」「建築画」「海洋画」「静物画」「肖像画」「風俗画」と紹介されます。
会場入口から見どころは各所にありますが、ここでは数点だけご紹介しましょう。まずは「肖像画」のフランス・ハルスです。
17世紀オランダ絵画では、レンブラントとフェルメールに並ぶ大きな存在であるハルス。堅苦しさを感じさせず、モデルの特徴を大胆な筆遣いでとらえる力量は、ハルスならではです。
「肖像画」注目のヨハネス・フェルメール《水差しを持つ女》は「風俗画」のコーナー。メトロポリタン美術館が所蔵する5点のフェルメール作品のうちのひとつで、今回が初来日となります。
左から光の入る室内にたたずむ女性という、フェルメール定番の構図。白いスカーフは当時の婦人の典型的な衣服です。女性が左手をかけている水差しと、その下に置かれた洗面器への映り込みも完璧。強い主張を持たない静かな画面は「時が止まったよう」と評されます。
ヨハネス・フェルメール《水差しを持つ女》もう1点の目玉、レンブラント・ファン・レイン《ベローナ》も初来日。古代ローマの戦いの女神を描いたもので、会場後半の「レンブラントとレンブラント派」で展示されています。
メデューサがあしらわれた盾、鎧も派手な飾りがついていますが、女神の顔つきは主婦のよう。レンブラントの婚約者を基にしているという説もあります。
レンブラント・ファン・レイン《ベローナ》レンブラントは工房で多くの弟子を抱えていましたが、ずば抜けた才能だったのがカレル・ファブリティウスです。レンブラントとフェルメールを継ぐ存在とまでいわれる逸材ですが、弾薬庫の事故のため32歳で死去。現存作品は10点弱ですが、本展には2点も出展されています。ビッグネームの前でやや影が薄いですが、こちらもお見逃しなく。
東京展は3月末まで。続いて東日本大震災復興事業として、
福島県立美術館に巡回します(4/6~5/8)
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年1月13日 ]■フェルメールとレンブラント に関するツイート