サイ・トゥオンブリー(Cy Twombly)は米国生まれ。1950年代から活動をはじめましたが、転機は1979年から。米ニューヨークで回顧展が開催され、発行されたカタログレゾネ(総目録)にフランスの高名な哲学者・批評家のロラン・バルトが論文を掲載した事から、80年代には高い認知度を得るようになりました。
94年にはMoMAで回顧展が開催、翌95年にはテキサスのメニル コレクション美術館に「サイ・トゥオンブリー・ギャラリー」が開館(設計はレンゾ・ピアノ)、そして96年には高松宮殿下記念世界文化賞、2001年にヴェニス ビエンナーレ金獅子賞、2010年にはレジオンドヌール シュヴァリエ勲章と数々の賞に輝き、世界的な美術家として名声を確立しました。
1階会場本展は2003年にエルミタージュ美術館で開催された展覧会がベース、その展覧会はトゥオンブリー自身が作品選定に関わりました。トゥオンブリーは2011年に死去しましたが、展覧会はパリ、ロンドン、ミュンヘン、ニューヨーク、ヒューストンと巡回。
原美術館の空間にあわせて再構成され、今回の開催となりました。
トゥオンブリーは絵画と彫刻の両面で知られますが、今回は紙の作品(ドローイング、モノタイプ)64点。即興的な作風は初期から見られますが、キャンバスではなく紙の作品ではより顕著にその傾向が現れます。
20代の中ほどで兵役についていたトゥオンブリー。そこで陸軍で暗号の作成と解読に携わっており、その経験が後の作品制作にも影響を与えているともいわれています。
2階会場日本にも
国立国際美術館、
ベネッセハウスミュージアム、
セゾン現代美術館などに作品が所蔵されているトゥオンブリーですが、意外にも国内の美術館レベルでの展覧会は今回が初めて。50年にわたる画業(出品作は1953年から2002年まであります)をお楽しみください。
本展にあわせて、別館の
ハラ ミュージアム アーク(群馬県渋川市)でも「サイ トゥオンブリー×東洋の線と空間」展が開催中(5/29~9/2)。トゥオンブリーの作品と原六郎コレクションの東洋古美術作品を対置して紹介するという、ちょっと珍しい企画です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年5月22日 ]© Cy Twombly Foundation / Courtesy Cy Twombly Foundation