PVではAKB48「ヘビーローテーション」や「さよならクロール」、映画は「さくらん」「へルタースケルター」、さらに2020年東京オリンピック・パラリンピックの大会組織委員会理事に就任と、写真家の枠を超えて活躍する蜷川実花さん。今回はモノクロのセルフポートレイトを企画の中心に据えています。
会場は、蜷川さんが学生の時から何度も足を運び「いつかはここで展覧会ができたら」と思っていたという、
原美術館。「こんなに何度も構成を考え直した事は無い」と、蜷川さんにとっても渾身の展覧会となりました。
会場1階は、まずギャラリー1で金魚や雑踏をモチーフにした映像・音響インスタレーション作品。「人の目を楽しませるために、奇形と奇形を掛け合わせてつくる」金魚は、人間の欲望の象徴として蜷川さんが繰り返し撮っている対象です。
一番大きなギャラリー2は「noir」。檻の中の愛玩動物、食糧としての屍など日常の中に潜む生や死に目を向けたもので、蜷川さんが自分の「生身に近い」と語る作品群です。
ギャラリー2:noir2階のギャラリー4は、目黒川の桜を撮った「PLANT A TREE」。実はこの作品は、蜷川さんが離婚を決意したその日に事務所近くの桜を撮ったもの。「その時にしか撮れない写真になっているのでは」と語ります。
そして、ギャラリー3と5が「Self-image」。多くのスタッフが関わる映像分野での仕事が続いた蜷川さんにとっても、完全に一人で完結するセルフポートレイトは、いわば原点といえるジャンル(蜷川さんのデビュー作は、モノクロのセルフポートレイトです)。「カメラ1台で何ができるか」と、自分自身を見つめ直す意味も込められています。
多くの人がイメージする蜷川さんとは、また違う一面の作品群。蜷川ファンはもちろんのこと、「蜷川なんて…」と斜に構えている方々こそ、ぜひ現地で体感してみてください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年1月22日 ]