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    レポート
    山本基 しろきもりへ―現世の杜・常世の杜―
    彫刻の森美術館 | 神奈川県
    塩で作った「届きそうで、届かない」思い。
    塩によるインスタレーション作品で、国内外で活躍中の山本基(やまもともとい)氏。彫刻の森美術館で、公開作品制作が行われました。
    「常世の杜(とこよのもり)」を制作中の山本基(やまもともとい)氏。
    枝のようにも、泡のようにも見えます。鑑賞者に近い手前と奥とで密度を変えるなど、細かい工夫も。
    会場には段が設けられ、鑑賞者も上から見ることができます。
    1階から中2階を望む。奥の階段の先に見えるのが、中2階の作品「摩天の杜」。
    1階の作品「現世の杜(うつしよのもり)」は、少し粒の粗い塩を使っています。
    中2階の「摩天の杜」、こちらもまだ製作途中です。左奥の壁面には写真作品「たゆたう庭」も。
    広々とした敷地に広がる野外彫刻。取材日は絶好の好天でした。
    アクセスは電車も便利。スイッチバックが楽しい箱根登山鉄道、「あじさい電車」としても有名です。
    山本基氏は1966年、広島県尾道市生まれ。塩を使ったインスタレーション作品で知られ、これまでにアメリカやヨーロッパなど約10カ国で作品を発表してきました。作品に塩を使うようになったのは、妹さんが脳腫瘍のため24歳の若さで亡くなったことがきっかけです。葬儀をテーマに作品を作るなかで、清めの塩を素材として使いはじめました。以来、15年間に渡って塩の作品を作っています。まずはその制作風景をご覧ください。

    2階で制作中の山本基氏。黙々と作り続けます。

    今回の展示会場は1階・中2階・2階の3室。順に上に上っていくような会場の特徴を活かし、上に鑑賞者を誘導するような構成です。

    1階は枯れ山水風の水門模様「現世の杜(うつしよのもり)」。庭石のように見える岩塩を、「登竜門」の故事にでてくる鯉に見立てています。鯉が目指すべき滝を模した作品が、中2階の「摩天の杜」。天井を突き抜ける白い塔は、塩を焼き固めて積み上げられたものです。ともに約3.5トンの塩を使っています。

    1階から中2階を望む

    木の枝や血管、進化の過程を表す図のような作品が、2階の公開制作作品「常世の杜(とこよのもり)」です。目には見えなくとも、確かに繋がっている命を表現した作品。動画でご覧いただいて分かるように、精製塩を油差しのボトルに入れ、一人で黙々と制作していきます。制作時間は1日約12時間、今回は12日かけて作り上げます。

    上からの俯瞰。これで50%ほどの完成度です。

    山本氏は、これまでも「細く複雑な迷路」や「途切れて登ることができない階段」などを塩で制作してきましたが、共通するテーマは「届きそうで、届かない」という思い。長い時間をかけて緻密な作業を続けることで、作品に濃密な情感を注いでいるように感じました。

    ちなみに、公開制作作品で使われた塩は「海に還るプロジェクト」として、展覧会の最終日(2012年3月11日)に来館者によって撤去され、海に還してもらいます。生命にとってかかせない塩。使われた塩は、あるいは我々の体の中にあったものかもしれません。

     


    彫刻の森美術館

    彫刻の森美術館は日本初の野外美術館として、1969年に開館。箱根の山々を望む広大な敷地に、ヘンリー・ムーアをはじめとする彫刻家の名作約120点が常設展示されています。世界有数のコレクション300点余りを順次公開しているピカソ館、子どもたちが中に入って遊べる造形作品「プレイスカルプチャー」などを備え、幅広い年代に親しまれています。

    ちょっと嬉しい施設は、美術館の敷地内から湧きでる温泉を利用した足湯「ほっとふっと」。広い敷地を歩いた後にはうってつけ、しかも無料です。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2011年7月22日 ]
     
    会場
    会期
    2011年7月30日(土)~2012年3月11日(日)
    会期終了
    開館時間
    9:00~17:00
    ※入館は閉館時間の30分前迄
    休館日
    年中無休
    住所
    神奈川県箱根町二ノ平1121
    電話 0460-82-1161
    公式サイト http://www.hakone-oam.or.jp
    展覧会詳細 山本基 しろきもりへ—現世の杜・常世の杜— 詳細情報
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