816(弘仁7)年に開創した高野山。本展は、来年2015年に開創1200年の節目を迎える事を記念した企画で、三章での紹介です(会場構成上、動線は章どおりではありません)。
第一章「大師の生涯と高野山」
第二章「高野山の密教諸尊」
第三章「多様な信仰と宝物」
仏画、書、仏具などにも名品が数多く出ていますが、特徴的なのは仏像の多さ。出品60件のうち3分の1の20件が仏像です。大型仏像はケース外展示も多く、近くでじっくりと鑑賞できるのも嬉しいポイントです。
会場奥に進むと、快慶作の重要文化財《四天王立像》が。手前から多聞天、持国天、増長天、広目天の順に並びます。四軀とも勇壮な姿ですが、中でも快慶が直接手掛けたとされる広目天は、肉体の把握や彫りの鋭さやで高い評価を得ています(「快慶作」の仏像は、快慶監修の元で複数の仏師によって造られたものです)。
奈良・東大寺の大仏殿には、以前は大仏とほぼ同じ大きさの巨大な四天王像があり(戦国時代に焼失)、本作はその雛形という説も(ただ、四軀すべてではありません)。確かに視線を下に向けたポーズは、巨像で表現するとさらに迫力が増しそうです。
重要文化財《四天王立像》快慶作階段を降りると、豪華な金の孔雀に乗った四臂(しひ:手が四本)の明王、重要文化財《孔雀明王坐像》が。1200(正治2)年に落慶した高野山孔雀堂の本尊、こちらも快慶作です。
孔雀明王(くじゃくみょうおう)は画像として表現されたものが多く、立体化された作品は稀少です。
(手前)重要文化財《孔雀明王坐像》快慶作 / (奥)国宝《五大力菩薩像のうち金剛吼菩薩像》(展示は10/11~11/3)お待ちかねの国宝《八大童子像》は、会場最後に登場。八軀の童子をそろって鑑賞できる、貴重な機会となりました。
恵光(えこう)、烏倶婆誐(うぐばが)、恵喜(えき)、清浄比丘(しょうじょうびく)、制多伽(せいたか)、矜羯羅(こんがら)、指徳(しとく)、阿耨達(あのくた)のうち、最初の六軀はⅩ線分析による像内の納入品から、運慶作と認められています(最後の二軀は作風が異なり、後年に補われたものと考えられます)。
不動堂の本尊である重要文化財《不動明王坐像》の眷属(けんぞく)ですが、不動明王の眷属は矜羯羅と制多伽の二童子の例が多く、八童子が揃うのは絵画を含めて多くありません。
自然なポーズですが、顔つきはさまざま。水晶を使った玉眼(ぎょくがん)の目の効果もあって、生き生きとした表現が見ものです。
国宝《八大童子像》(はちだいどうじぞう)三井記念美術館の「
東山御物の美」(10/4~11/24)、
渋谷区立松濤美術館の「
御法に守られし 醍醐寺」(10/7~11/24)、そして
東京国立博物館の「
日本国宝展」(10/15~12/7)と、この秋は東京の美術館で国宝・重要文化財を多くそろえた企画展が次々に開催されていますが、本展も指定文化財が実に47点。八大童子像、四天王立像、孔雀明王坐像は全期間展示されますが、期間中に展示替えされる作品もありますので、
公式サイトの出品作品リストでご確認の上、お出かけ下さい。
なお本展は2015年1月23日(金)~3月8日(日)、
あべのハルカス美術館に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年10月10日 ]■高野山の名宝 に関するツイート