ルーベンスはベルギーのアントワープで主に活動した画家ですが、創作活動の源泉は実はイタリア。23歳からの8年間をイタリアで過ごし、マントヴァ公国の宮廷画家として活動しました。当時のイタリアはルネサンス文化が花開き、世界の美の最先端。ここで巨匠の作品に触れたルーベンスは、多くのことを学んでいます。
VIDEO ペーテル・パウル・ルーベンス ≪復活のキリスト≫ 1616年頃 フィレンツェ、パラティーナ美術館 油彩・カンヴァス、183x155cm (c)Gabinetto fotografico della S.S.P.S.A.E e per il Polo Museale della citta di Firenze/ 肉体表現の力強さにはミケランジェロの影響が感じられます。 当時、ネーデルラント(現在のオランダとベルギーにほぼ相当する地域)の絵画芸術は、静物画や風景画が主流でしたが、ルーベンスはアントワープに戻った後もイタリアでの経験に研鑽を積み、偉大な人物画家として大成していきます。
展覧会のメインビジュアル、「ロムルスとレムスの発見」はイタリア建国の物語に想を得た作品。中央の狼と双子の子供ロムルスとレムスは、古代ローマの彫刻作品をイタリア時代に模写したものがベースになっています。描かれたのはアントワープ時代ですが、ルーベンスがイタリアで学んだことを生涯磨き続けたことがよく分かります。
VIDEO ペーテル・パウル・ルーベンス≪ロムルスとレムスの発見≫1612-13年頃 油彩・カンヴァス、210x212cm ローマ、カピトリーナ絵画館(c)ROMA CAPITALE-SOVRAINTENDENZA BENI CULTURALI-MUSEI CAPITOLINI イタリアからアントワープに戻ったルーベンスは、大きな工房を組織します。戦争が終わったアントワープでは絵画制作の依頼が多く舞い込みました。その注文に対応すべく、ルーベンスは弟子たちに作業の多くを担わせました。ルーベンスが絵の下絵を描き、弟子たちがその下絵を元に絵画を制作していくスタイルでした。
VIDEO 第2章「ルーベンスとアントワープの工房」 ルーベンスは自分の作品を正しく世に広めることに熱意を注ぎ、その姿勢は版画制作によく現れています。ルーベンスは自分の作品の版権を厳しく管理、クオリティにもとても厳しい画家でした。版画師が上げた版に修正の指示を何度も加えて、版を作り直させています。当時、これは大変珍しいことでした。
VIDEO 第5章「ルーベンスと版画制作」 内覧会では監修者の中村俊春先生のギャラリートークも開催されました。今回は中村先生が世界各地からルーベンスの真筆、もしくは極めてクオリティの高い弟子の手による模写作品を厳選。「これだけまとまった質の高いルーベンス作品を集めるのはなかなか難しいんです!」と情熱たっぷりに解説し、会場も大いに沸きました。
知ってるようで知らない、見たことあるようで見たことない画家ナンバーワンかもしれない、本当のルーベンスがわかる見どころ満載のルーベンス展、必見です。
[ 取材・撮影・文:川田千沙 / 2013年3月8日 ]