野田裕示(のだひろじ)さんは、1952年和歌山県生まれ。多摩美術大学を卒業した翌1977年に、南画廊の最も若い世代の作家として個展が開催されるなど、早くから才能を認められた画家です。これまでも活発に発表を行ってきましたが、1995年に和歌山県立近代美術館で個展が開催されて以来、野田さんの創作活動を概観するような展覧会は開催されていませんでした。
第1部「1980年代─絵画の可能性への試み」本展は野田さんの初期から現在に至る30年間の活動を展望するもので、1980年代、90年代、2000年代の3部構成です。支持体を袋状に覆ったり、カンヴァス自体を縫い合わせたり、近年の作品は下地は平滑で画面は有機的な形象と、そのスタイルは変化し続けています。
第2部「1990年代─独自の様式の確立と展開」国立新美術館の大空間に負けないように作られた作品が《WORK 1766》。縦約4m、横約6.5mの大作です。会場ではこの作品を制作する過程の映像も上映されており、分度器をスキージ代わりに使って色を塗ったり、電動工具のサンダーで磨きこんだりと、制作方法は独特。果ては家庭用掃除機まで登場します。
第3部「2000年代─さらなる可能性を求めて」かなり大きな作品が多い展覧会ですが、広い国立新美術館ではゆったりと鑑賞可能。1F カフェ・コキーユでは《WORK 1422》をイメージした「バニラ抹茶ラテ」が特別メニューで出ています。美味でした。
第3部「2000年代─さらなる可能性を求めて」
コレクションを持たず、国内最大級の展示スペースをもつ新しいタイプの美術館として開館した国立新美術館も、2012年1月21日で開館5周年。アートディレクターの佐藤可士和さんによる開館5周年シンボルマークも発表されました。今年はこの後も3月28日から「セザンヌ―パリとプロヴァンス」、4月25日からは「大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年」と、注目展が目白押しです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2012年1月17日 ]