京都に生まれた竹内栖鳳。その画業は四条派からスタートしますが、積極的に他派の手法も取り入れていきました。
1900年にはパリ万博視察のために渡欧。最先端の西洋美術にも触れましたが、その手法を日本の絵画に活かすべく模索していきます。
本展では栖鳳の代表作や重要な作品をできるかぎり網羅。約110点の作品と素描などの資料約50点で、栖鳳の歩みを展観します。
会場入口から栖鳳は修業時代から身近な生き物を熱心に写生しました。
初期は動物の毛の流れまで綿密に描写、後期は線の本数が減ってスピード感が強くなるなど表現には変化が見られますが、継続的な写生は栖鳳の創作のベースになっています。
会場に並ぶ作品には、徹底した観察から生まれた数々の動物が。雀、犬、象、猿、ライオン、虎…。鳴き声まで聞こえてくるかの如く、栖鳳は対象の本質を追い求めました。
動物の屏風絵が並ぶ会場本展では下絵も多く出展されているため、制作の過程もうかがい知ることができます。
《夏鹿》は昭和11年の作品(展示期間:9月3日~23日、東京会場のみ)。隣の下絵と比べてみると鹿の脚の曲がり具合や体の傾きなどが修正されており、鹿の配置の細部にまでこだわっていたことが分かります。
《夏鹿》昭和11年 MOA美術館蔵栖鳳の人物画はあまり多くありませんが、本展では人物画の傑作も紹介されています。
《絵になる最初》は、モデルが初めて裸身をさらす前の恥じらいを描いた作品。手で顔を半分隠し、目をそらした表情はとても印象的です。高島屋はこの絵に描かれた模様の着物「栖鳳絣」を考案、人気を博したとも伝えられています。
《絵になる最初》大正2年 京都市美術館蔵会場では「美術染色の仕事」「旅」「水の写生」と、3つの特集展示コーナーも設置。テーマに沿った作品や資料の展示で、栖鳳の取り組みを横断的に紹介しています。また「こどもセルフガイド」も用意されていますので、子ども連れでも楽しめそうです。
なお、展覧会は9月23日(月・祝)までの前期と9月25日(水)からの後期で大きく展示内容が変わります。※《斑猫》は9月25日(水)~10月14日(月・祝)の展示です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年9月2日 ]※本展は10月22日(火)~12月1日(日)、
京都市美術館に巡回します。