展覧会は六章構成。第一章の仏像・仏画から、もし日本に残っていれば国宝・重要文化財の指定を受けていたであろう逸品がずらりと並びます。
展示品全てが目玉のような構成ですが、ここでは二大絵巻をご紹介します。
吉備大臣入唐絵巻ひとつ目は遣唐使・吉備真備をユーモラスに描いた「吉備大臣入唐絵巻」。
唐で鬼になった阿倍仲麻呂と出会い、超能力で空を飛び、試験内容を事前にカンニングし、碁で負けそうになって石を飲み込んでと、荒唐無稽のストーリー。
ぐったりしていたり、驚いて慌てていたりと人物表現もユニーク。時の権力者である後白河法皇が作らせた絵巻コレクションの一つと考えられています。
平治物語絵巻 三条殿夜討巻もうひとつは一転して、凄惨な場面も登場する「平治物語絵巻」。源平争乱の幕開けとなる平治の乱の激闘を描いたものです。
信頼・義朝の政敵である信西(しんぜい)の首を求め三条殿を襲う軍と、逃げ惑って命を落とす人々の様子を詳細に描画。
ともに元々は天皇や公家、社寺などにより厳重に守り伝えられていましたが、幕末以降の急変で美術市場に放出されました。
第六章「アメリカ人を魅了した日本のわざ ─ 刀剣と染色」刀剣と染色は、東京展のみで紹介。その後には近世絵画の屏風絵などが続き、長谷川等伯が68歳の時の作品「龍虎図屏風」や、伊藤若冲の初期の作品「鸚鵡図」なども展示。
その後に、いよいよお目当ての曽我蕭白となります。
ボストン美術館の日本美術コレクションの中でも異彩を放つ曽我蕭白の作品群。大胆な構成の中に、荒々しい筆使いと繊細な表現が同居する画風は、独特の魅力があります。
第五章「奇才 曽我蕭白」メインビジュアルになっている雲龍図は縦165.6cm、横は8面並べると1,080cmという大きさ。こんな大きな龍の墨絵は見たことがありません。
最後の展示室は全てが曽我蕭白の作品のため、見えるもの全てが蕭白ワールド。たっぷりとその魅力を堪能できます。
今回の取材は報道内覧会ではなく平日でしたが、かなりの人気ぶり。公式サイトに混雑状況も出ていますので、チェックしてから、時間に余裕を持ってお出かけください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2012年3月21日 ] | | 奇想の系譜
辻 惟雄 (著) 筑摩書房 ¥ 1,365 |