須田悦弘さんは1969年生まれ。多摩美術大学ではグラフィックデザインを学びましたが、在学中の彫刻の課題でリアルなスルメをつくったことを機に、木彫に開眼しました。
須田さんの作品は木彫だけではなく、置かれている空間がポイント。木彫と場所とのかかわり全体が、須田さんの作品です。
展覧会の冒頭は、木彫を置くための空間も須田さん自身が手がけた作品から。《睡蓮》は天井から円形の光が入る白い空間。《東京インスタレイシヨン》は、細い通路のような空間に朴(ホオ)の葉と実の木彫が置かれた作品です。
《睡蓮》《東京インスタレイシヨン》7階の展示は「須田悦弘による江戸の美」。須田さんが千葉市美術館のコレクションから選んだ江戸絵画・版画の名品の展示です。
小さな展示台を林立させ、浮世絵を平置きで展示されるのも須田さんの発案。まるで東京国立博物館の法隆寺宝物館のような空間になりました。
照明が斜め上から当たっているため、角度を変えて見ると「雲母摺り(きらずり)」の絵はギラっと光って見えるのもポイント。実際の浮世絵は手に取って見ていたので、壁にかけるより、むしろこの方が自然な見え方ともいえます。
「雲母摺り」がギラリ先に進むと、古美術と自作とのコラボレーション展示もあります。須田さんは2000年に、大倉集古館で国宝の《普賢菩薩像》のケース内に自身の小さな作品《雑草》を入れたことを機に、古美術作品と自作の木彫を組み合わせた展示を行ってきました。
今回も《椿図屏風》の前に《椿》を置くなど、各所に作品を展示。作品は意外なところに隠れるように展示されているので、探しながら見ていく楽しさもあります。
朝顔はこんなところに(会場で探したい方はご覧にならないでください)本展は美術館1階の「さや堂ホール」でも展示があります。ネオ・ルネッサンス様式の「さや堂ホール」は、川崎銀行千葉支店として昭和2年に建てられた建物を保存したもの。須田さんの作品は4点展示されています。
「さや堂ホール」での展示本展は来館者も自由に撮影ができるのも嬉しいポイント(一部の作品を除く)。「受付で作品リストをもらう」「靴は脱ぎやすいもので」「大きな荷物はロッカーへ」等の諸注意は、
美術館サイトに詳しく案内されています。(取材:2012年11月14日)