東北地方で本格的に仏像がつくられるようになったのは、平安時代になってから。自然環境の厳しい東北で、人々は仏の姿に生活の安寧を祈ってきました。
会場は本館特別5室。国宝1件、重要文化財8件を含め、東北6件から仏像の優品が揃いました。
会場会場の奥に囲むように並べられたのが「東北の三大薬師」。向かって右から順に、宮城・双林寺の重要文化財《薬師如来坐像》と重要文化財《二天立像(持国天・増長天)》、福島・勝常寺の国宝《薬師如来坐像および両脇侍立像》、岩手・黒石寺の重要文化財《薬師如来坐像》と《日光菩薩立像・月光菩薩立像》です。
福島・勝常寺の国宝《薬師如来坐像》の堂々とした体躯は、ケヤキの巨材を用いた一木造(いちぼくづくり)。国宝指定は1996年で、彫刻分野では東北初の国宝です。都の仏像でも見られる表現が取り入れられているため、空海と交流があった僧・徳一(とくいつ)が制作に関わった可能性も指摘されています。
国宝《薬師如来坐像》福島・勝常寺像高90センチ前後と小ぶりながら躍動感あふれる表現が目を引くのは、本山慈恩寺の重要文化財《十二神将立像(丑神・寅神・卯神・酉神)》。それもそのはず、鎌倉時代に活躍した運慶に代表される慶派の作品です。
本山慈恩寺があるのは、山形県寒河江市。この地は平安時代から藤原家の荘園であった事から、比較的早い時代から最先端の表現が取り入れられたと考えられています。
重要文化財《十二神将立像》山形・本山慈恩寺会場出口近くに並ぶ3体の立像は、いずれも円空仏。滑らかな表面と細部のつくり込みは、2013年に同じ特別5室で開催された「
飛騨の円空」展と比べると、同じ人物とは思えないほどです。
これらは、円空の初期の作品。円空はこのような「普通の仏像」もつくれるにも関わらず、後期になるとノミ跡が荒々しい、いわゆる「円空仏」を選んだのです。
円空仏会期中に丸4年目となる「3.11」を迎える本展。特別2室と特別4室では、特別展「3.11大津波と文化財の再生」も同時に開催されています。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年1月13日 ]