その姿はチケットにも使われ、
根津美術館のアイドルともいえる重要文化財《双羊尊》。いつもは2階の展示室4で紹介されていますが、未年の今年最初の展覧会、堂々と特別展に登場です。
会場は4テーマで構成、テーマ1は「古代中国の動物」です。
中国の青銅器は、動物の宝庫。殷時代(紀元前16~11世紀)にはじまる彜器(いき:祭祀に用いる青銅器)には、虎、ミミズク、そして饕餮(とうてつ)とよばれる怪獣など、さまざまの動物が表現されました。
テーマ1「古代中国の動物」お目当ての双羊尊は、ここで紹介されています。
世界にふたつしか無いという事も含めて、今までは「類似する作品」として紹介される事が多かった両・双羊尊ですが、じっくり観察すると首の形状をはじめ、髭の有無、表情、角の巻き方など、異なる部分がかなり多い事にも気が付きます。
根津美術館と大英博物館の《双羊尊》双羊尊以外も、動物モチーフを扱った絵画・工芸品をご紹介。テーマ2は「仏教絵画に描かれた動物」です。
仏教絵画で描かれる動物は、それぞれ役割を持っています。《春日鹿曼荼羅》の白鹿は、春日明神の使者。室町時代、15世紀の作品です。
テーマ2「仏教絵画に描かれた動物」 《春日鹿曼荼羅》テーマ3は「画題となった動物」。動物が絵の主題になるのは、14~15世紀に中国からの作品がもたらされて以降の事です。動物の表現は形を表すだけでなく、神秘性や権威、吉祥などの意も込められています。
室町時代の《牡丹猫図》も、
根津美術館の人気作のひとつ。猫の目線の先には蝶がいて、「猫」「蝶」は、中国で老人を意味する「耄(ほう)」「耊(てつ)」と音が同じ事から、長寿の意味が込められています。
テーマ3「画題となった動物」 《牡丹猫図》テーマ4は「生活を彩る動物」。動物を取り入れた茶の湯の動画や、生活を彩る工芸品が紹介されます。
金属の細かいパーツを組み合わせて、関節を動かす事ができる「自在置物」。伊勢海老は武士の甲冑を思わせる縁起物です。
ポーズがユーモラスな猿は、江戸時代(18~19世紀)の備前の焼き物。16世紀以降の工芸品には、動物の猛々しさよりも、愛らしさやユーモラスさを表現した作品が数多く見られます。
テーマ4「生活を彩る動物」 順に《伊勢海老置物》《色絵備前猿置物》銘文も発掘記録が無い事もあり、分かっていない事が多い双羊尊。制作場所についても、従来は殷王朝が栄えた黄河流域とされていましたが、近年の研究で揚子江流域の湖南省が有力視されるようになりました。今後の研究にも期待したいと思います。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年1月9日 ]