「○○児童作品展」のように、子ども“が”描いた絵画展は良く開かれますが、本展は子ども“を”描いた絵画展。パリのオランジュリー美術館で2009年~2010年に開催された“Les enfants modèles”(モデルとなった子どもたち)展を、日本向けに再構成しました。
パリの展覧会は、約20万人を動員。東京では20万人クラスの企画展は珍しくありませんが、パリではかなり優秀です。目の肥えたパリっ子たちからも多くの支持を集めた、折り紙つきの企画展といえるでしょう。
序章は、近代的な視点で子どもの肖像を描き始めた先駆者的な画家の作品から展覧会は序章から始まって6章構成、1章「家族」は19世紀から20世紀末までの家族の肖像画です。
この章には、家族に囲まれてリラックスした表情を見せる子どもの他に、病気の子どもを慈しむ母親を描いた作品も。19世紀において“子どもの夭逝”は、しばしば起こりうる悲劇でした。
1章「家族」2章は「模範的な子どもたち」。1870年代~1914年、ベル・エポック(良き時代)の子どもの肖像画です。この時代は市民階級が定着し、子どもの地位も確立。子どもを描いた肖像画も黄金時代を迎えました。
展覧会メインビジュアルは、アンリ・ルソー《人形を抱く子ども》。人形を抱いた少女はどっしりとした体型ながら、なぜか草原に浮いているかのようです。
ルソーも7人の子どものうち、6人は幼い頃に亡くなっています。悲しい経験が、この絵の不思議な世界観を生んだのかもしれません。
2章は「模範的な子どもたち」3章は「印象派」。モネ、ルノワール、ベルト・モリゾ(マネのモデルとしても知られる女性画家)、ジュリー・マネ(ベルト・モリゾの娘で、マネの姪)の作品が並びます。
ルノワールの《ジュリー・マネの肖像、あるいは猫を抱く子ども》は、8歳のジュリー・マネを描いた作品。くっきりとした輪郭は、印象派から離れ、アングルの影響を受けていた頃のルノワール作品にみられる特徴です。
3章「印象派」4章は「ポスト印象派とナビ派」。セザンヌ、ヴュイヤール、ドニなどです。
モーリス・ドニは、本展に6点出展(最多はピカソの7点です)。家族思いのドニは、自分の子どもたちの肖像を数多く描きました。
ふざけてボクシングをする二人の子ども、大きな音を出そうといたずらっぽくトランペットを吹く息子…。どの作品からも、子どもたちの明るい声が聞こえてきそうです。
4章「ポスト印象派とナビ派」展覧会はこの後も5章「フォーヴィスムとキュビスム」、6章「20世紀のレアリスト」と続き、ピカソやレオナール・フジタなどの作品も続々と登場します。
人は誰でも、最初は子ども。見守って支える、温かな大人たち。愛情に満ち溢れ、ほっこりとした気分になる展覧会です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年4月18日 ]