日本が誇る芸術作品として海外でも評価が高い浮世絵ですが、もともとは庶民の手軽な娯楽。そば一杯分の値段で買えるブロマイドであり、風俗雑誌であり、マンガ本ともいえるような存在でした。
浮世絵の人気ジャンルのひとつが、本展でご紹介する戯画。本展ではアイディア溢れる脱力系の戯画が紹介されていきます。
いつものように冒頭は肉筆画から「寄せ絵」は、沢山のものを集めて大きなものにした絵のこと。野菜で作った肖像画のアルチンボルドなど、西洋にも同様の作例が見られます。
猫が集まって「かつを」「うなぎ」などの文字になったのは、歌川国芳の《猫の当て字》。袋に頭を突っ込んだ描写など、確かな観察眼は猫好きだった国芳の真骨頂です。
寄せ絵影絵も江戸時代には流行。宴席などでも楽しまれました。
伊勢海老に似せたり、擬宝珠(ぎぼし)になったりと変幻自在。アクロバチックな姿勢にはどことなく哀愁も漂います。
影絵地下では絵の中に文字が隠されている「文字絵」などを紹介。
七福神が組み上げている文字は「壽(寿)」。縁起が良いものばかりが描かれた1枚です。
地下の展示笑いを通り越して呆れてしまうような作品もありますが、一方で強調したいのは確かな画力。卓越したデッサン力と優れたデザイン性は、ユーモアの中からも見え隠れしています。
例によって浮世絵作品なので、前後期で作品は大きく入れ替わります。半券提示で100円割引の「リピーター割引」もありますので、ご活用ください。
なお、展覧会の内容とは関係ありませんが、太田記念美術館は珍しく靴を脱いで上がるタイプの美術館でしたが、本展から靴脱ぎは不要になりました。脱ぐのに時間がかかるブーツの方も、本展からはお気軽に。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年9月30日 ]