1748年から発掘が続くポンペイ。250年に及ぶ調査で約8割が発掘され、多くの資料が出土しています。
今回の展覧会は壁画が主役。ポンペイとその周辺で見つかった壁画を、絵画的な要素に焦点をあてて紹介していきます。
会場に入ると、壁画の大きさと鮮やかさにビックリ。一昼夜降り続いた火山灰と、その後に押し寄せた火砕流は多くの人の命を奪いましたが、皮肉にも壁画は長期に渡って美しい姿が保たれる事となりました。
第1章「建築と風景」会場は描かれたテーマごとの4章構成。第2章「日常の生活」では、見つかった建物の1室がそのまま移転してきました。
建物は葡萄酒を製造していた農園別荘で、大きな居室はトリクリニウム(食堂)です。
ローマ貴族の所領における農業生産の拠点だったこの建物に相応しく、それぞれの壁面には葡萄酒の神・ディオニュソスに関連する主題が描かれています。
第2章「日常の生活」ポンペイの壁画には、神話画もしばしば登場します。
ポンペイはイタリアの都市ですが、描かれる神話はほとんどがギリシャ神話。当時のローマ人は、教養としてギリシャ文化を学んでいました。
展覧会のメインビジュアルは、ポンペイ北西のエルコラーノで1739年に見つかったアウグステウム(通称「バシリカ」、皇帝崇拝の場)の壁画。発掘者は巧みな描写に驚愕し「神のごときラファエッロ」の作品になぞらえて讃えました。
第3章「神話」最後の第4章は「神々と信仰」。古代ローマで祀られた神々を描いた壁画です。
ポンペイの守護神はウェヌス(ヴィーナス)ですが、前述のディオニュソスとともに祀られる事もあるなど、地域性によって表現に差異が見られます。ギリシャ神話との集合も進んでいます。
第4章「神々と信仰」ポンペイが埋まったのは紀元後79年ですから、キトラ古墳や高松塚古墳(ともに7-8世紀)よりずっと前。これほど鮮明な壁画が残っているのは不思議に思えるほどです。
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2006年(Bunkamuraザ・ミュージアムなど)、2001年(江戸東京博物館など)、1997年(横浜美術館など)と、過去に何度か開かれているポンペイ展ですが、まさに決定版といえる豪華展です。東京展の後は名古屋、兵庫、山口、福岡(予定)に巡回、
日程はこちらです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年4月28日 ]■ポンペイの壁画展 に関するツイート