ロンドンで画商を営んでいるイスラエル・ゴールドマン氏。会場最初の《象とたぬき》は、一度は顧客に転売したものの、忘れられずに買い戻した作品です。ゴールドマン氏による暁斎コレクションは、ここから始まりました。
第1章では鴉(カラス)ばかりを集めました。暁斎は鴉を描いた作品で内国勧業博覧会の最高賞を受賞し、海外でも大評判に。後述するように何でも描ける暁斎ですが、あえて「暁斎ならでは」を1点あげるなら、間違いなく鴉です。
序章「出会い ─ ゴールドマン コレクションの始まり」、第1章「万国飛 ─ 世界を飛び回った鴉たち」第2章は「躍動するいのち」。動物を描く時は、脳裏に焼き付くまで観察し、描く時にはその場を離れて記憶を元に描き、イメージが消えると再び観察し…を繰り返して描きました。
第3章は「幕末明治」。暁斎が活躍したのは、幕末から明治にかけての大変革期でした。さまざまな混乱もありましたが、暁斎はユーモアを交えて描いています。
第4章は「戯れる」。端午の節句で家に飾るため、暁斎の鍾馗図は飛ぶように売れました。鬼を掴まえたり、蹴り上げたり、崖から吊るしたりと、鍾馗のスタイルも自由自在。高いデザイン性が光ります。
第2章「躍動するいのち ─ 動物たちの世界」、第3章「幕末明治 ─ 転換期のざわめきとにぎわい」、第4章「戯れる ─ 福と笑いをもたらす守り神」本展の大きな見せ場が、第5章「百鬼繚乱」。迫真の《幽霊図》は、暁斎の後妻・阿登勢が亡くなったときの写生を元に描かれたと伝わります。地獄模様の打掛を着た遊女と一休和尚の伝説は、暁斎得意の題材で、本展の2点以外も知られています。
第6章は「祈る」。仏画も得意とした暁斎ですが、数が多いのは達磨と観音です。晩年には「日課観音」と称して、毎日、観音を描いていました。
第5章「百鬼繚乱 ─ 異界への誘い」、第6章「祈る ─ 仏と神仙、先人への尊祟」会場の一角では、春画も紹介されています。暁斎が描いた春画は、春画の別名である「笑い絵」そのもの。営みの途中でちょっかいを出す猫、女陰の中から化け物の顔、男根で綱引きと、カラっとした明るさ。女性器の形の落款など、サービス精神も溢れています。
「笑う ─ 人間と性」なぜ暁斎を集めるのか問われると「暁斎は楽しいからですよ!」と答えるというゴールドマン氏。確かに暁斎の絵からは、文化や風習を超える、普遍的な可笑しさが感じられます。
Bunkamura ザ・ミュージアムから始まり、高知、京都、石川とまわる巡回展。
会場と会期はこちらです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年2月22日 ]■ゴールドマン コレクション これぞ暁斎 に関するツイート