1760年に、本所割下水(現在の北斎通り)付近で生まれた葛飾北斎。没するまでに93回も転居したといわれていますが、そのほとんどが現在の墨田区内とされています。
大江戸線両国駅から徒歩5分、
すみだ北斎美術館は緑町公園に隣接した地にオープンしました。シルバーの外観が特徴的な建物は、妹島和世さんによる設計です。
地上4階・地下1階の館内には、2つの企画展示室と常設展示室のほか、浮世絵や北斎に関する資料を揃えた図書室、オリジナルグッズを揃えたミュージアムショップなども設けられました。
4階の常設展示室の入口手前に掲げられているのが「須佐之男命厄神退治之図」(すさのおのみことやくじんたいじのず)。関東大震災で焼失した北斎晩年の傑作を、白黒画像をもとに復元したものです。
特徴的な外観と、明るい館内常設展示室は、美術館にしては珍しく黒で統一された空間です。足元の青い光は、隅田川の流れをイメージしています。
展示は7つのエリアで構成。すみだと北斎の繋がりを皮切りに、時代順に代表作(実物大高精細レプリカ)が展示されています。
展示室中央の「北斎絵手本大図鑑」では、北斎の作品がタッチパネルで楽しく紹介されています。こちらは子どもの人気も集めそうです。
常設展示室の最後には、北斎アトリエの再現模型も。リアルな人形はじっと見ていると動きますので、お見逃しなく。
常設展示室開館記念の企画展は「北斎の帰還-幻の絵巻と名品コレクション-」。区が所蔵する北斎の名品の中から肉筆画、版画、摺物、版本など123点(前後期あわせて)を展示する試みです。
会場最初は、後世の画家が描いた北斎のイメージから。引っ越しが多いため「居所不定」と書かれている人名録など、ユニークな資料も展示されています。
本展最大の注目が、幻の絵巻「隅田川両岸景色図巻」です。1902年にフランスで競売にかけられて以降、行方不明になっていた作品で、約100年ぶりのお目見えとなりました。全長約7m、前半は隅田川両岸の景色を洋風表現も交えて描き、後半には新吉原での遊興の様子を生き生きと表現しました。展示ケースが浅めなので、近寄って見られるのもファンには嬉しい限りです。
他にも「冨嶽三十六景」をはじめ、代表的な作品がずらり。世界が驚嘆した北斎ワールドを、じっくりとお楽しみいただけます。
開館記念展は「北斎の帰還-幻の絵巻と名品コレクション-」オープン前から行列ができるなど高い注目を集める中で、華々しくオープンした
すみだ北斎美術館。次回展では、世界的な北斎コレクターのピーター・モース氏によるコレクションと、浮世絵研究の日本での第一人者といわれる楢﨑宗重氏のコレクションも紹介される予定です。今後の取り組みからも目が離せません。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年11月18日 ]■すみだ北斎美術館 に関するツイート