展覧会のディレクションは、21_21 DESIGN SIGHTディレクターを務める深澤直人さん。深澤さんはプロダクトデザインの第一人者のため、モノをつくる側でもありますが、今回は選び手になって「雑貨とは何か」から紐解いていきます。
展示室の前にあるのは、山のような行商の荷車。江戸~明治時代には、ザルやヤカンなどの生活必需品を売り歩く行商が盛んにあり、こちらは写真資料を基に現代の日用品で再現したもの。荒物(あらもの)と呼ばれたこれらの品々は、現在の雑貨に繋がります。
荒物の行商は、まるで祭りの山車のようです続いて、雑貨がどのように私たちの暮らしに取り入れられてきたのか、15のキーワードで探る「雑貨のルーツ」。
紹介されているキーワードは「バウハウス」「北欧デザイン」「民藝運動」「プラスチック」「消費社会」など。工業化の進展、大量生産・大量消費社会の到来、大衆に訴える広告宣伝…時代の風景とともに、雑貨としてとらえられる品々も変わっていきました。
ちなみに深澤さんがデザインした携帯電話「INFOBAR」も、ここに展示されています
「雑貨のルーツ」広い展示室に進むと、手前の展示台では深澤さんと展覧会企画チームが選んだ雑貨が紹介されています。明確な定義がない雑貨の世界。それゆえ、選ぶ人の数だけ雑貨の種類があるともいえます。
並んでいるのはハサミ、作業用手袋、目玉クリップ、キッチンタイマー、汁椀…1点1点は「文房具」「食器」などの特定のカテゴリに入れる事もできますが、ひとくくりにすると「雑貨」としか表現できません。
「雑貨展の雑貨」会場にはデザイナーやスタイリストらが各自のテーマで作った雑貨の世界観も展示されています。
ナガオカケンメイ+D&DEPARTMENTは、家にある「必要以上に複数ある使っていない生活用品」を集めてコンビニを構成。プラスチックのスプーン、古い雑誌など、確かにどの家でも見つける事ができます。
野本哲平の「雑種採集」は傑作。本来の用途と違う目的で使われた品々として、お米の袋を使ったハンドルカバーや、シューキーパーになったキンチョールの缶など。使い手の発想で生まれた雑貨です。
藤城成貴はアイデアが雑貨になるまでのプロセスを紹介。自転車のカゴが壁に掛けて使われているのを見て壁掛けの収納を思いつく→素材は柔らかいほうがいい→運動会の玉入れ用のカゴは? と、進みます。
展示風景「カワイイおすすめザッカがいっぱい!」という展覧会ではありませんが、なかなか深い企画展です。会場1階では、深澤直人セレクトの雑貨を中心に参加作家・出展者にまつわる雑貨も販売中です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年2月26日 ]