近年の活躍も目覚しい草間彌生。若いファンの方は、草間彌生が60年代に「前衛の女王」と呼ばれ、最先端の芸術家として注目されていたことはご存知ないかもしれません。
2階の吹き抜けスペースでの展示草間彌生は1929年・松本市生まれ。幼少期より絵を描き始め、1954年からは東京でも個展を開くなど活躍を始めますが「古いしがらみから逃れたくて、日本を出たくて出たくて仕方がなかった」(草間彌生自伝「無限の網」2002年、以下の引用も同著より)といいます。
米国の著名女性画家であるジョージア・オキーフに手紙を出したところ、直筆の返事をもらうという幸運にも恵まれ、1957年、27歳の時に単身で渡米。当初は食べるにも苦労するほどの困窮を極めますが、徐々にアートシーンの中で注目を集め始めます。
Endless Loves Room 終わりなき愛◇水玉模様のファルス(男根)で覆われた四角い箱の中は、永遠にファルスが続いている草間は1965年から「ハプニング」表現を活発化させます。1967年以降はニューヨークを中心にオランダ、ローマ等で多くのハプニングやファッションショーを展開。ベトナム反戦運動、アメリカ大統領選挙といった時代背景も受けて社会的要素も含んでいった草間のハプニングは大きな反響を呼び、同時代の多くのアーティストに影響を与えました。
3階の展示は映像作品が中心「恐怖感を表現の対象にする」という草間は、対象となるフォルムを作り続けることで恐怖の感情を押さえ込もうとします。「フォルス(男根)みたいなあんな長くて醜いものが入ってくるなんて、考えただけで怖い」という草間は、ソフト・スカルプチュアの男根を大量に作り、その表現に埋没することで存在を消滅させるのです。
会場では立体や写真のほか、映像作品を国内で初めて無修正オリジナルバージョンで上映。60年代の草間ワールドを多面的に総括しています。
4階の展示室全体を使った「水玉強迫」50年以上に及ぶ草間の創作活動の中から、近年、再評価が進む初期の活動に注目した本展。展覧会には幅広い年代の方が訪れているそうで、改めて注目を集めているようです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2011年9月28日 ]
草間彌生 ボディ・フェスティバル in '60s 展
Kusama's Body Festival in '60s
休館日:月曜日 [ 祝日は開館 ]
開館時間: 11時より19時まで [毎週水曜日は21時まで延長]
入館料:大人 1000円 / 学生 [ 25歳以下 ] 800円
ペア券:大人 2人 1600円 / 学生 2人 1200円
会期中何度でも入場できるパスポート制チケット