サブカルチャーの文脈をファインアートに取り込み、世界を股にかけて活躍する村上隆さん。森美術館で開催中の「
村上隆の五百羅漢図展」では圧巻の《五百羅漢図》を公開し、観客の度胆を抜いています。
コレクションについて「陳列して愛でるのではなく、(アーティストとしての)トレーニングのために作品を買う」と語る村上さん。並んだ作品は、村上さんの審美眼そのものと言えます。
エントランスの大空間から展示はスタート。最初は巨大な彫刻やインスタレーション作品で、飛行機の残骸などを用いたアンゼルム・キーファー、村上さんと親交が深い李禹煥(リ・ウーファン)らが紹介されています。
「彫刻の庭」2階に上がると、古美術などが並ぶ「日本・用・美」。縄文土器からヨーロッパのスリップウェアまで、さまざまの陶磁器が並びます。
多彩な村上さんのコレクションの中でも、陶磁器は質・量ともに群を抜く存在。桃山時代の志野茶碗や、北大路魯山人・川喜田半泥子・荒川豊蔵など近代の器も含まれています。
このコーナーでは、曽我蕭白や白隠慧鶴など江戸絵画も展示。独自の視点で、日本人が古来から持っている美意識に切り込みます。
「日本・用・美」続いて「スタディルーム&ファクトリー」。デイヴィッド・シュリグリーの《ヌードモデル》は、人体デッサン教室です。人体モデルの彫刻をイーゼルが囲み、来館者は自由にデッサンを描く事ができます。裸の人体モデルは、まばたきをするとともに、時おりユニークな動作も。足元のバケツがポイントです。
馬車のような《California Orange Covered Wagon》は、奈良美智さんの作品。内部も奈良さんの作品で埋めつくされています。
「スタディルーム&ファクトリー」続く展示室は、あらゆるものがカオス状に混在している「村上隆の脳内世界」。制作年代、制作地、素材など、展示されている品々に統一性は皆無。唯一の規則は「村上隆が選んだ」という事だけです。
「(手に入れる事がトレーニングなので)入手したモノは倉庫に直行」と話す村上さん。このようなかたちでコレクションをまとめて見るのは、自分でも初めてかもしれません。
「村上隆の脳内世界」会場最後は、村上さんのコレクションの主要な柱である現代美術。若き日の村上さんのスターだったダグ・アンド・マイク・スターン、自画像の重要性を認識したホルスト・ヤンセンと、アーティストとしての村上さんに直接影響を与えた作家の作品も紹介されています。
なお通常の横浜美術館は建物の右半分で企画展、左半分でコレクション展(常設展)が開催されていますが、本展はあまりにも作品数が多い事もあって、企画展が常設展側に拡張(常設展も開催中ですが、いつもより少スペースです)。あらゆる点で、規格外の展覧会となりました。
「1950-2015」相続税の問題もあり、美術品を蒐集するには、日本は恵まれた国とはいえません。村上さんも将来的には、このコレクションをより多くの鑑賞者の目に触れる場所に移したいという希望がある、とのこと。「村上隆コレクション」としてのお披露目は、これが最初で最後になるかもしれません。
「
村上隆の五百羅漢図展」との相互割引も実施中。半券の提示で、一般当日料金が200円引きになります。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年1月29日 ]■村上隆のスーパーフラット・コレクション に関するツイート