IM
    レポート
    杉本博司 趣味と芸術 ─ 味占郷/今昔三部作
    千葉市美術館 | 千葉県
    謎の料理人による初個展?
    2015年11月3日に開館20周年を迎えた千葉市美術館。開館記念展第2弾の「Tranquility−静謐」で宮島達男さんらとともに招待されたのが、現代美術家の杉本博司さん(1948-)でした。20年後に再び杉本さんを招待した本展、今回は2部構成の展覧会として開催中です。
    《海景》シリーズ
    《劇場》シリーズ
    《ジオラマ》シリーズ
    (左から)「東西南北」 / 「割烹の開き方」
    左手前の「電球形白磁向付」は、電器店の販促用に作られたもの
    (奥・左から)「百代の過客」 / 「西方からの遣い物」 / 「梅花の真」 / 「宴の前」
    (左から)「遠い記憶」 / 「さやかな音色」
    「時代という嵐」
    (左から)「海賊の皿」 / 「真摯なる領域」
    コンセプチュアルな写真で、世界的な評価を得ている杉本博司さん。美術館入口の8階で開催されている「今昔三部作」は、杉本さんの代表作といえる《ジオラマ》(1975-)、《劇場》(1975-)、《海景》(1980-)の3シリーズを紹介するものです。

    画面の中央で空と海が等分され、無限の階調が広がっていく《海景》。映画のスクリーンとその光に照らし出される劇場を、映画1本分の長時間露光で撮影した《劇場》。博物館の生態展示を被写体とし、実態と虚構の境界を掬う《ジオラマ》。ニューヨークの杉本スタジオから貸与された大判プリント作品には、荘厳な神々しさを覚えます。

    展覧会は会場構成も杉本さんが手がけており、作品の選定はもちろん、照明も綿密に計算されています。例えば《海景》は通常のスポットライトで見せていますが、《劇場》は作品だけに照明を当て、さらに写真の中のスクリーンだけを照らす照明を追加。《ジオラマ》シリーズの大きな作品は中央のみに光を当て、両サイドは意識的に暗くしています。


    8階の「今昔三部作」

    7階は「趣味と芸術 ─ 味占郷」。『婦人画報』誌で連載中の「謎の割烹 味占郷」のなかで、杉本さんが各界の著名人をもてなすために、毎回そのゲストにふさわしい掛軸と置物を選んで構成した床飾りを再現したものです。連載で杉本さんは料理も出していましたが、店主が杉本さんとは最近まで明かされませんでした。

    杉本さんはニューヨークで古美術商を営んでいた事もあり、趣味として古今の名品や珍品を蒐集。床飾りも同時代の掛幅と器を揃えている事もあれば、木彫のキリスト像を置いたり(12月号の掲載に合わせたもの)、18世紀の西洋解剖図を軸に仕立てたりと、独特のセンスが光ります。


    7階の「趣味と芸術 ─ 味占郷」

    しつらえは、前述のキリスト像のように季節にあわせたものだけでなく、ゲストにあわせる場合も。例えば映画「硫黄島からの手紙」に出演した中村獅童さんの時には、栗林中将が実際に所持していた硫黄島の地図を軸装して掛けられました、

    逆に、しつらえに合わせてゲストが選ばれる時もあります。土瓶に棒を添えた「土瓶棒(ド貧乏)茶漬」をふるまった相手は、若い頃は相当な貧乏だったという竹野内豊さんでした(杉本さんは意外にもダジャレ好きです)。

    会場のパネルで掲載された月とゲストが確認できますので、参照しながらご覧いただければと思います。


    しつらえには、焼夷弾の筒や、雨樋を切った花入れなども

    店主の口上によると、割烹「味占郷」の営業は不定期で、気の向いたお客様のみおもてなしをする敷居が高い店で、予約は百年先まで埋まっているとの事。なんとも威丈高ですが、もちろん「味占郷」はフィクションです。

    店主の言葉も“いかにも”という体裁のため、「味占郷」が実在すると思っている方もいるそうで、美術館には「料理人の展覧会があると聞いたのですが…」との問い合わせも入るそうです。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年11月5日 ]

    趣味と芸術 謎の割烹 味占郷趣味と芸術 謎の割烹 味占郷

    杉本 博司 (著), ハースト婦人画報社 (編集)

    ハースト婦人画報社
    ¥ 2,808


    ■杉本博司 千葉市美術館 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2015年10月28日(水)~2015年12月23日(水・祝)
    会期終了
    開館時間
    午前10時-午後6時 (入場は午後5時30分まで)
    金曜日・土曜日は午後8時まで (入場は午後7時30分まで)
    休館日
    11月2日(月)、12月7日(月)
    住所
    千葉県千葉市中央区中央3-10-8
    電話 043-221-2311
    公式サイト http://www.ccma-net.jp/
    料金
    一般 1,200円(1,000円)/大学生 700円(500円)/小・中学生、高校生無料
    ※( )内は前売券、団体20名以上の料金
    ※市内在住65歳以上の方は一般料金より2割引
    ※障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料
    展覧会詳細 「開館20周年記念展 杉本博司 趣味と芸術-味占郷/今昔三部作」 詳細情報
    おすすめレポート
    学芸員募集
    荻窪三庭園 施設管理運営スタッフ募集! [荻窪三庭園]
    東京都
    横浜みなと博物館ミュージアムショップ アルバイト募集!(増員のため募集期間延長) [帆船日本丸・横浜みなと博物館]
    神奈川県
    日本科学未来館 展示技術を担う常勤職員(任期付)募集中! [日本科学未来館]
    東京都
    令和7年度採用 契約職員募集 [静岡科学館、静岡市生涯学習センター各施設等配置先については、採用後に決定し通知します。]
    静岡県
    大阪市公文書館調査員会計年度任用職員募集中! [大阪市公文書館]
    大阪府
    展覧会ランキング
    1
    国立西洋美術館 | 東京都
    モネ 睡蓮のとき
    開催中[あと53日]
    2024年10月5日(土)〜2025年2月11日(火)
    2
    麻布台ヒルズ ギャラリー | 東京都
    ポケモン×工芸展 ― 美とわざの大発見 ―
    開催中[あと44日]
    2024年11月1日(金)〜2025年2月2日(日)
    3
    米子市美術館 | 鳥取県
    MINIATURE LIFE展2 田中達也 見立ての世界
    開催まであと50日
    2025年2月8日(土)〜3月24日(月)
    4
    京都文化博物館 | 京都府
    世界遺産 大シルクロード展
    開催中[あと44日]
    2024年11月23日(土)〜2025年2月2日(日)
    5
    日本科学未来館 | 東京都
    特別展「パリ・ノートルダム大聖堂展 タブレットを手に巡る時空の旅」
    開催中[あと46日]
    2024年11月6日(水)〜2025年2月4日(火)