「風景画」と銘打った展覧会ですが、最初に並ぶのはどう見ても宗教画。東方三博士や聖母子など、良く見る面々が並びます。ただその背景に着目すると、川の流れや数々の建物、木々や山の連なりなど風景的な要素も描かれている事が分かります。
風景画というジャンルの創立者とされるのが、ヨアヒム・パティニール。《聖カタリナの車輪の奇跡》も主題こそ伝説ですが、手前の岩から奥の水平線までの広がりを見事に描き出しており、紛れもなく風景画と位置付けられます。
第1章「風景画の誕生」。動画最後が、ヨアヒム・パティニール《聖カタリナの車輪の奇跡》本展の注目作品が、1年12カ月の月暦画中で表現されている風景。レアンドロ・バッサーノ(通称)による連作が、展示室を囲うように展示されています(9・10・12月は展示されていません)。
《1月》には、馬に跨って狩りから帰ってきた毛皮の貴人。《6月》は収穫したさくらんぼと、試食する女性。《5月》には牛から乳を搾り、バターとチーズを作る農民たち。それぞれ遠景には薄日が差しており、山の姿がくっきり。画面上部にはそれぞれの月の星座のシンボルも描かれています。
レアンドロ・バッサーノによる、月暦画連作展覧会の後半は、独立した主題になって以降の風景画の展開について。17世紀半ばになると風景画はジャンルとして確立し、オランダの画家たちは自らの感性でそれぞれの風景画を描くようになっていきます。
険しい岩山やうっそうとした木々、渓流の流れなど、特徴的な自然を描いた風景画が描かれる一方で、都市をテーマにした風景画もあります。教養としての旅「グランド・ツアー」が流行すると、体験を記録するために都市の姿を描く事が必要となり、風景画としての都市景観図が発展していきました。
第2章「風景画の展開」大学生のみなさんには嬉しい企画も。休館日の10月5日(月)は特別企画「キヤノン・ミュージアム・キャンパス」として、学生証を提示すると無料で観覧が可能です。
展覧会は3カ所を回る巡回展で、最初の会場が
Bunkamura ザ・ミュージアム。続いて静岡展(
静岡県立美術館:12月19日~2016年3月21日)、福岡展(
石橋美術館:2016年4月2日~6月12日)と進みます。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年9月8日 ]■風景画の誕生 に関するツイート