抜群の描写力、ユーモアあふれる発想、さらに美術史を俯瞰するクールな眼も持ち合わせ、多くのメディアで活躍する山口さん。来館者を楽しませる事では定評がある山口さんですが、本展も会場構成から独特です。
会場に入ると、展示室を突っ切ってロープパーテーションの通路が。小路のような動線で、ひと部屋ごとに異なる作品世界を楽しんで進む趣向です。通路の途中には、展示室を横切って進む交差点のような仕掛けもあります。
ロープパーテーションの通路。交差点のような仕掛けも印象的です第3室に入ると、巨大な電柱が。山口さんは近年、電柱をモチーフにした作品を制作していますが、本展では再構成した《忘れじの電柱 イン水戸》を展示しました。
展示室には電柱の横に階段状の通路を設置。電気工事業者のような目線で、電柱を上から眺める事ができます。
壁面には《自由研究(柱華道)》も。景観の嫌われ者である電柱を、華道に見立てて表現しています。
第3室には電柱が最奥の第5室にも《大和撫子》《ベンチ》《ポータブルマン》など新作が並びます。
思わず笑ってしまうのが、手書き文字でつぶやく《紙ツイッター》と、山口さんの食の嗜好がうかがえる《食日記》。これらの作品は、ぜひ会場でご確認ください。
第5室会場後半にある直線50mの第6室は水戸芸術館の見せ場のひとつといえますが、本展では長い壁面を利用して大作《続・無残ノ介》を一気に展示。
伝説的な日本刀を操る、劇画調ストーリー。歩きながらじっくりとお楽しみいただけます。
長い壁面を活かした《続・無残ノ介》の展示「前に下がる 下を仰ぐ」という変わったタイトルも、山口さんの発案。山口さんならではの人生観、芸術観を表しています。
少し遠い印象の水戸ですが、上野から特急で1時間強。3月14日からは「上野東京ライン」も開通し、品川方面からのアクセスも便利になります。近くの
茨城県近代美術館で4月19日(日)まで開催中の「笑う美術」展にも、山口晃さんの作品が出展されています。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年2月24日 ]■山口晃展 前に下がる 下を仰ぐ に関するツイート