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    レポート
    デミタスコスモス ~宝石のきらめき★カップ&ソーサー~
    三井記念美術館 | 東京都
    300点超のデミタスがずらり
    茶道具や屏障画など日本美術の展覧会が多い三井記念美術館ですが、今回はちょっと異色。食後に濃い味わいのコーヒーを飲むための小ぶりの器「デミタス」がずらりと並びます。
    (左から)ロイヤルウースター《上絵金彩ジュール透彫カップ&ソーサー》 / ロイヤルウースター《上絵金彩ジュール透彫ポット》
    (左から)KPMベルリン《上絵金彩花文カップ&ソーサー》 / ロイヤルドルトン《緑地カップ&ソーサー》 / ウィーン《上絵金彩菫のリース図カップ&ソーサー》
    (左から)マイセン《上絵金彩貼花カップ&ソーサー》 / マイセン《上絵金彩貼花鳥蓋付カップ&ソーサー》 / マイセン《上絵金彩貼花カップ&ソーサー》
    ガラスのデミタス
    (左から)コールポート《上絵金彩鳥図カップ&ソーサー》 / コールポート《染付金彩竹雀文カップ&ソーサー》
    展示されているデミタスは300点超
    (左から)ローゼンタール《上絵金彩マリー・アントワネット図カップ&ソーサー》 / ローゼンタール《上絵金彩モーツアルト図カップ&ソーサー》
    (左から)ロイヤルクラウンダービー《上絵金彩伊万里手ハイハンドルカップ&ソーサー》 / ロイヤルクラウンダービー《上絵金彩伊万里手カップ&ソーサー》 / ロイヤルクラウンダービー《上絵金彩伊万里手カップ&ソーサー》
    (左から)七代錦光山宗兵衛《上絵金彩花に蝶図カップ&ソーサー》 / 七代錦光山宗兵衛《上絵金彩人物図カップ&ソーサー》

    デミタスのコレクションでは日本の第一人者である、東京在住の鈴木康裕(やすひろ)・登美子(とみこ)夫妻。現在では500点以上のデミタスを所有していますが、なんと康裕さんは一般のサラリーマン。月給から1ヶ月に1点ずつコツコツと購入し続け、ここまでの規模になりました。


    会場には18世紀から20世紀初頭のセーブルやマイセン、KPMベルリン、ミントン、ロイヤルウースター、ロイヤルクラウンダービー、コールポートなど、ヨーロッパの名窯で作られた作品を中心に、宝石のように美しいデミタスがずらり。ひとつひとつは小ぶりですが、総数は参考出品も含めて約320点と、見ごたえたっぷりです。


    会場入口から


    いつもは国宝《卯花墻》などが紹介される展示室2にあるのは、本展の目玉作品ロイヤルウースター《上絵金彩ジュール透彫カップ&ソーサー》。


    細かな透かし彫りがカップ全体に施されており、とても陶磁器とは思えない作品です(そのため、もちろん実用品ではありません)。


    手掛けたのは、ジョージ・オーエン(1845-1917)。オーエンは技法を誰にも明かさなかったため、他に作れる人は誰もいませんでした。


    ロイヤルウースター《上絵金彩ジュール透彫カップ&ソーサー》 / ロイヤルウースター《上絵金彩ジュール透彫ポット》


    先ほどの作品もそうですが、鈴木夫妻のコレクションで最も数が多いのがロイヤルウースター。イギリス第一の名窯といわれ、この窯の歴史はイギリス磁器の発達史そのものと言われます。


    会場に並ぶロイヤルウースターのデミタスは40点以上。果物や花々、鳥などを美しく描いた作品が目にとまりますが、中にはかなりユニークなデミタスも。《上絵ジャガイモと葉形カップ&ソーサー》はジャガイモそのもので、芽が出ているところまで表現されています。担当の小林祐子学芸員イチオシの作品です。


    ロイヤルウースターのデミタス


    鈴木夫妻のデミタスコレクションの中には、日本で作られたものも。19世紀中頃の万国博覧会から日本の工芸品に注目が集まり、輸出向けの陶磁器制作が加速。このあたりの経緯は、昨年の「超絶技巧!明治工芸の粋」展でも紹介されました。


    薩摩、京都、九谷など、さまざまな産地でカップ&ソーサーが作られています。


    日本製のデミタス


    鈴木夫妻は昭和42年の結婚当初、共通する趣味がなかったため、お互いに好きだったコーヒーにちなんでデミタスを集め始めたのが、コレクションのきっかけ。当時デミタスはコーヒーカップの三分の一から半値程度で、あまり無理せずに収集する事ができたそうです。


    「新しい作品を手に入れる時は、必ずふたりで相談してから購入する」という微笑ましいエピソードもあるお二人。まさに和製ハーブアンドドロシー(自分の給料で買える範囲でコツコツと現代美術を集め、世界的コレクターになった米国の夫妻)といえそうです。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年2月6日 ]


    TOKYO美術館 2014-2015

     

    エイ出版社
    ¥ 1,026

    会場
    会期
    2015年2月7日(土)~2015年4月5日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:00まで)
    休館日
    月曜日休館 2月22日(日)
    住所
    東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 三井本館7階
    電話 03-5777-8600 (ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.mitsui-museum.jp/
    料金
    一般 1,300(1,100)円/大学・高校生 800(700)円/中学生以下無料
    ※70歳以上の方(要証明)は1,000円
    ※()内は20名以上の団体料金
    ※障害者手帳をご提示の方およびその介護者1名は無料
    展覧会詳細 特別展 デミタスコスモス ~宝石のきらめき★カップ&ソーサー~ 詳細情報
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