12万点という収蔵品のほとんどが民間からの寄贈というNGA。今回ご紹介するのも、エイルサ・メロンのコレクションが中心です。
エイルサはNGAの創設者の実業家、アンドリュー・W・メロンの長女。エイルサは自邸を飾るために作品を収集し、上質で上品な印象派の作品群には定評があります。
展覧会は第1章「戸外での制作」から。チューブ絵の具の発明により、屋外で描く事が容易になると、画家たちは創作の場を求めてアトリエから戸外へ。陽光のもとで描かれた絵画は印象派を生み、後の新印象派に繋がっていきます。
第1章「戸外での制作」展覧会メインビジュアルのルノワール《猫を抱く女性》は、第2章「友人とモデル」で紹介されています。
柔らかい毛並の猫をそっと抱く、伏し目がちの少女の表情が印象的。少女はルノワールお気に入りのモデルだったニニ・ロペスと考えられています。
第2章「友人とモデル」第3章「芸術化の肖像」には、同じくらいの大きさの3点の自画像が並びます。
右から順に、酒も飲まず穏やかだったエドゥアール・ヴュイヤール、気難しい性格で友人が少なかったエドガー・ドガ、印象派と親しく交わりながら自らは印象派的絵画は描かなかったアンリ・ファンタン=ラトゥールです。
第3章「芸術化の肖像」第4章は「静物画」。シャルダンへの関心の高まりとともに19世紀半ばに興った、静物画の流行(2012年に、同じ三菱一号館美術館で「シャルダン展」も開かれました)。
小型の静物画は、新しいコレクターであるブルジョア階級にも好まれました。
第4章「静物画」最期の第5章は「ボナールとヴュイヤール」。エイルサのコレクションの中で、ピエール・ボナールとエドゥアール・ヴュイヤールは大きな位置を占めています。
ナビ派の中でも「親密派」(アンティミスト)と称されたふたり。室内に身近な人物を配し、私的な印象の作品を多く手がけました。
第5章「ボナールとヴュイヤール」紹介される作品は小型のものがほとんどですが、一点一点の完成度は高く、濃密な作品ばかり。逆に小型ならではの「親密さ」をじっくりお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年2月6日 ]■ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 に関するツイート