岩井俊二「スワロウテイル」、三谷幸喜「清須会議」、クェンティン・タランティーノ「キル・ビル Vol.1」と、主に実写映画で活躍している種田陽平さん。種田さんが初めてアニメーション映画の美術監督を務めたのが「思い出のマーニー」です。
本展は「思い出のマーニー」の世界を、映画のセットのように三次元で建ち上げた企画展。種田さんとジブリのコラボ企画展は、2010年にも「
借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展」が開催されましたが、今回は映画の美術監督も種田さんが務めているため、『物語の深い部分まで表現できた』と、種田さん自らが評します。
会場に入るとまず目に入るのは、物語の重要な舞台である「湿っ地(しめっち)屋敷」のジオラマ模型。ボートで屋敷に近づく杏奈と、部屋の中にはマーニーの姿も見えます。池に面した側だけでなく、反対側にあたる屋敷の正面も表現されています。
「湿っ地屋敷」のジオラマ模型種田さんはマーニーの部屋では装飾や小道具まで徹底的にこだわりました。ここにはマーニーが生きてきた風景のすべてが詰め込まれています。
湿っ地屋敷の歴史も、種田さんは細かく設定しています。屋敷は英国人建築家の設計で、1930年代に建設。戦争で家主がいなくなり、貿易商の別荘として1952年に改修されました。50年前の改修は作品では全く触れられませんが、種田さんは改修計画の図面も作成。世界観にリアリティを与えています。
会場では、物語の中で印象的なシーンのジオラマ模型も用意されています。
入江の奥にある漁師小屋は、杏奈とマーニーが二人でボートを漕いで初めてピクニックに行った場所。屋敷近くのキノコの森では、杏奈が心に秘めていた悩みをマーニーに告白し、二人の友情が深まります。
マーニーにとっては辛い思い出が残る廃墟となったサイロで、物語はクライマックスを迎えます。このサイロでは見事な演出が体感できます。
「思い出のマーニー」の原作は、1967年に英国の児童文学作家、ジョーン・G・ロビンソンが執筆しました。会場では1967年に出版された初版本も展示されています。この本の挿絵が、米林監督のイメージスケッチに。さらに種田さんのデザイン画になり、ジブリ美術スタッフの西川洋一さんが美術ボードを描き、映画の世界観がかたちづくられていきました。
江戸東京博物館で開催される企画展で、ここまで作り込まれているのは久しぶり。映画を見てから会場にお越しいただくと、楽しさ倍増間違いなしです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年7月29日 ]©2014 GNDHDDTK Production Design Yohei Taneda
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