このコーナーでも毎年ご紹介している「発掘された日本列島」展(
2013年、
2012年)。20周年の今年は会場も拡大、まずは第1会場の常設展示室6階 特設会場からご紹介しましょう。
江戸博のシンボル・日本橋を渡ると目に入る大型の埴輪。旧石器時代から中世までの考古資料がずらっと並ぶさまは圧巻です。
冒頭の日向林B遺跡(長野県信濃町)は、東京展だけでの紹介。約3万5,000年前の後期旧石器時代の遺跡で、現在確認されている遺跡では最も古い部類に入ります。
この遺跡からは、砥石とともに磨製石斧を発見。多くの地域では新石器時代に出現するため注目を集めました。展示されている石斧の刃の部分は、驚くほど鋭利です。
日向林B遺跡(長野県信濃町)から見つかった砥石と磨製石斧風張1遺跡(青森県八戸市)からは、国宝《合掌土偶》が出展。こちらも東京展だけでの紹介です。
手を合わせて祈っているように見えることからこの名で呼ばれますが、体育座りの姿勢は紐などを握って出産している姿という説もあります。
国宝《合掌土偶》宮内庁からも、極めて価値が高い銅鏡2点が特別に出展されました。
1点目は佐味田(さみた)宝塚古墳(奈良県北葛城郡河合町)から出土した家屋文鏡(かおくもんきょう)。背面に異なる四棟の建物が描かれており、このような鏡は現存唯一。考古学はもとより、建築史や美術史においても極めて重要な銅鏡です。
もう1点は新山古墳(奈良県北葛城郡広陵町)から出土した直弧文鏡(ちょっこもんきょう)。直線と弧線を組み合わせた直弧文は、日本の古墳時代特有の文様です。
家屋文鏡と直弧文鏡第2会場は、通常の列島展が行われている常設展示室5階 第2企画展示室。近年注目された旧石器時代から近世までの発掘調査の成果を速報展示します。
全国巡回する本展。例年は東京展からの開催ですが、今年は
東北歴史博物館に次いで2会場目です。ちょうど夏休みシーズンにあたるため、多くの人にお楽しみいただけると思います。
常設展示室5階 第2企画展示室第2会場にも注目の考古資料が並びますが、ここでは平安京右京三条一坊六町「西三条第(藤原良相邸)」(京都市)をご紹介。仮名文字が描かれた器が見つかり、新聞などでも話題になりました。
平仮名は10世紀に成立したとされていましたが、発掘された資料は9世紀後半のもの。ただ、10世紀の仮名文字とは異なる点も多く、まだ十分に判読できていません。
最古級のひらがな資料20年間におよぶ調査の中で忘れてはならないのが、2000年に発覚した前期旧石器時代遺跡の捏造事件。これまでの列島展のポスターにも捏造された遺跡が掲載されているものがありますが、ただし書きを入れた上でそのまま紹介されています。事件も含めて、20年の歴史。発掘調査の成果と埋蔵文化財の意義についても、改めて考えさせられます。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年7月25日 ]■発掘された日本列島 に関するツイート