展覧会は5章構成。世界各国の26組のアーティストによる作品が並びます。
1章は「文化を超えて」。冒頭で紹介されているジェイコブ・A・リースが、移民の子どもたちを「ゴー・ビトゥイーンズ」と呼んだ写真家です。スライド映写機を持って各地で貧困の現状を訴え、時のセオドア・ルーズベルト大統領による社会改革の契機ともなりました。
在日コリアン3世の金仁淑(キム・インスク)は、在日コリアンのアイデンティティに迫る「SAIESEO:はざまから」シリーズ、中国出身のジャン・オーは、米中間で養子縁組された娘とその養父を撮影した「パパとわたし」シリーズ。民族問題はデリケートなテーマですが、余計な思惑とは次元が異なる、強いファミリーの絆が印象的です。
1章「文化を超えて」2章は「自由と孤独の世界」。
愛らしさや無邪気さなどの「子どもらしさ」が感じられない写真は、小西淳也《子供の時間》。他者の干渉を避けるように自分だけの世界をつくる事も、子どもの一面です。
2章は「自由と孤独の世界」3章は「痛みと葛藤の記憶」。不安定な家庭や戦争の記憶など、子どもが社会の中で抱える葛藤がテーマです。
「ストーリー・コー」は、ラジオプロデューサーのデヴィッド・アイセイが2003年に設立したプロジェクト。全米各地の様々な生い立ちの人々の家族や友人との対話を記録するプロジェクトで、展覧会にはアニメーション化された2つの対話が紹介されています。
3章「痛みと葛藤の記憶」4章は「大人と子どものはざまで」。思春期の子どもをテーマに、大人と子どもの境界を行き来する子どもの性質を紹介します。
ニューヨーク在住の近藤聡乃によるマンガ《まちあわせ》は、大人の心に子ども時代の感覚が突如としてよみがえるストーリー。同じく近藤のアニメーション《きやきや》は、思春期の少女の変化する身体や性的なイメージと、無邪気な子どものイメージが交錯していきます。
4章「大人と子どものはざまで」5章は「異次元を往来する」。想像の世界と現実を自由に行き来する事ができる事は、子どもならではです。
とてもユニークな作品が、山本高之さんの《どんなじごくへいくのかな、東京》。ワークショップで子どもが「地獄」を考え、大人のスタッフと共に立体物を制作。子どもはカメラの前で自分が考えた地獄を解説します。
大人では思いもつかないストーリーを話す子供たち。発想は実に細やかで、物語はディテールまで及びます。映像には英語の字幕も出ていますが、外国人のプレスの方がお腹を抱えて笑っていたのが印象的でした。
5章「異次元を往来する」なお本展は、全国巡回展。
森美術館の後は
名古屋市美術館(2014年11月8日~12月23日)、
沖縄県立博物館・美術館(2015年1月16日~3月15日)、
高知県立美術館(2015年4月5日~6月7日)と廻ります。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年5月30日 ]