7世紀末~8世紀に造られたと考えられているキトラ古墳。石室内部には青龍・朱雀・白虎・玄武の四神が、その下には獣頭人身の十二支、天上には天文図が描かれており、歴史的にも学術的にも極めて重要な壁画古墳です。
壁画が描かれた漆喰は剥離が激しいため、特別な器具を使って取り外されました。その後、クリーニングや強化処理が行われ、ようやく短期間での公開が可能な段階に。2006~2010年には奈良文化財研究所飛鳥資料館で公開されて話題となりましたが、明日香村から出るのは今回が初めてとなります。
会場は
東京国立博物館の本館特別5室。まず展示室の前半では、実寸大で復元した陶板で解説されます。復元とはいえ、寸法・色彩はもとより、質感も含めて極めて精巧。ここでは、顔を近づけて細部までご確認ください。
実物大の復元陶板奥に進むと、いよいよ取り外された壁画が登場します。今回の特別展では「四神」の朱雀・白虎・玄武と、「十二支」の子・丑が出展されています。
「四神」の展示は、玄武・白虎・朱雀の順。驚くのは、その状態の良さです。チラシと実物では受ける印象が違うことが少なくないため、過度な期待は控えていましたが、特に玄武と白虎については、彩色から線の太さまでクッキリ。1,000年以上前の創作の息づかいが聞こえてくるかのようです。
「四神」の展示は、玄武・白虎・朱雀の順「十二支」は、子と丑。それぞれの壁の下に三軀ずつ描かれました。
残念ながら、こちらは目を凝らさなければ分かりにくい状態ですが、ともに向かって左側に縦に赤い棒状のものが確認できます。「鉤鑲(こうじょう)」と呼ばれる棒状の盾であるとも言われています。
「十二支」は、子と丑キトラ古墳壁画は、修理終了後には2016年度をめどに明日香村に新設予定の壁画保存管理施設で保存公開される予定で、その後は村外に出る可能性はかなり低くなります。東京でキトラ古墳壁画を観られる機会は、文字通り最初で最後かもしれません。会期はわずか4週間です。お見逃しなく。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年4月21日 ]