英国の美術を世界に紹介するために、創立の翌年から作品の収集を始めたブリティッシュ・カウンシル。現在では絵画や彫刻、映像、インスタレーションなど、約9,000点の作品を所蔵しています。
常に所蔵作品の半数以上を世界各国の展覧会の会場か、各地のブリティッシュ・カウンシルのオフィス内で展示するなど、専用のミュージアムこそありませんが、組織は美術館そのもの。本展はそのコレクションを初めて日本で大々的に紹介する企画で、作家28名、126点の作品が展示されました。
会場東京ステーションギャラリーでの展示は「昔々あるところに…」「見たことのない景色の中で」「わたしの在り処」「ちょっと拝借」「喜劇と悲劇の幕間に」の構成。90年代以降に制作された作品が並びます。
《ペニアン人の村》は伝統的な形の壺ですが、十字架像があるべきところに描かれているのは男性自身。「趣味が良い」という一般的な価値観への異議を唱えたものです。
作者はグレイソン・ペリー(Grayson Perry 1960-)。2003年にターナー賞を、2013年には名誉大英勲章CBEを受章しています。
グレイソン・ペリー《ペニアン人の村》「I'm DEAD(私、死んでいます)」の立札を持つ、剥製の犬の作品《アイム・デッド》は、デイヴィッド・シュリグリー(David Shrigley 1968-)によるもの。2013年のターナー賞にノミネートされました。
小さな人体が並んだ《死者と死にゆく人》も死を題材にした作品ですが、どことなくコミカル。壁面の写真やドローイングにも、英国人らしいユーモアが盛り込まれています。
デイヴィッド・シュリグリーの《アイム・デッド》《死者と死にゆく人》など作品点数が多いこともあって、いつもは東京ステーションギャラリーの所蔵品が展示されているスペースも使って開催されている本展。現代美術にありがちな難解な作品は少なく、作者の意図が分かりやすい作品が多いのも特徴的です。
28名中の出展作家の中で、17名がターナー賞のノミネート・受賞者という豪華な展覧会。「英国現代美術館のいま」を、感じてください。
なお、本展は東京展の後に、
伊丹市立美術館/伊丹市工芸センター(4/12~5/25)、
高知県立美術館(11/2~12/23)、
岡山県立美術館(2015年1/9~2/22)に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年1月17日 ]